Guided by Voices
Propeller(1992:Rockathon)
Robert Pollard - guitar & vocals
Jim Pollard - guitar
Tobin Sprout - guitar & vocals
Greg Demos - bass & guitar
Don Thrasher - drums
with
Mitch Mitchell - guitar
Dan Toohey - bass
1年間の空白期間をはさんで、1992年にリリースされた5枚目のアルバム。
1991年はツアーというわけでもなく、特に目立った活動はしていない。
もっとも、このころのロバートは、まだ小学校の先生をしているパートタイム・ミュージシャンのはずだが。
今回もレーベル変更と、メンバーチェンジあり。
今回のメンバーは、前作メンバーにトビン・スプラウトが参加した形態だ。
ミッチ・ミッチェルもサポートメンバーながら復帰をしている。
ちなみに、僕が聞いているのは1993年にScatから次作と2on1で再発されたCDによる。
作曲は、今回もロバート・ポラードが全曲にタッチしている。しかし、約半数の曲は他のメンバーとの競作。特に10曲目のクレジットは"Sprout-R.Pollard"になっている。トビンをはじめとして、他のメンバーの発言力が増してきた証拠だろう。
もっともGbVがどの程度、ロバートのワンマンバンドなのかはよくわからない。案外、「いい曲だから収録してみようぜ」って簡単な理由なのかも。
録音は、相変わらずデモテープレベルのごちゃっとした音が多い。
だけどあふれ出るメロディをかたっぱしから捕まえて詰め込んだ、いきいきした元気なアルバムだ。
<各曲紹介>
1)OVER THE NEPTUNE/MESH GEAR FOX
いきなり二曲のメドレーで5分強もある。アナログ盤では2曲の別の曲としていたが、CD盤では一曲として扱われている。
イントロは「GbV!GbV!」と連呼するシュプレヒコールから。数百人キャパくらいのライブハウスあたりで、実際に録音したようにも聞こえる。
曲そのものは、威勢のいいロック。
中盤で一度テンポチェンジして、雄大なメロディが湧き出してくる。最後のギターソロもとてもかっこいい。
オープニングを飾るにふさわしい、わくわくする魅力的な曲。
2)WEED KING
高低音をブーストされたヴォーカルによるミドルテンポの曲。ボーカル・演奏ともに溜め込んだ力を押さえつけているような緊張感が楽しめる。
微妙にハモる多重ヴォーカルの厚みが、そう思わせるのかもしれない。
演奏も、ギターを何本も重ねている。オブリガートのメロディは、歌声にまけないくらいすばらしい。
そして「Stop!」の叫び声で、唐突に曲はカットアウトする。
3)PATICULAR DAMAGED
ゆがみまくった録音の曲。こちらもテンションの高い演奏だ。聞いていてつい、ピンク・フロイドの「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール・パート・2」を思い出してしまう。
ベースとギターが下からあおる、テンションが高い演奏にのってヴォーカルががなりたてる。
4)QUALITY OF ARMOR
ジングル風のアカペラ(多分、後半のコーラス・トラックをコピーしてトップに持ってきたんだと思うが)のあと、軽やかにギター・ポップが演奏される。ライブで盛り上がりそうだが、アイディア一発と言う気もする。
メロディはきれいだしアレンジも練られているけれど、もうひとひねりあるほうが僕はいいな。
5)METAL MOTHERS
煮え切らない歌がへったくそなんだけども、メロディの楽しさでついつい引き込まれてしまう曲。アレンジはミドルテンポのギター・ロックで、とくに新しさはない。
甘いメロディで、少しづつ上に上っていく。青春ソング風の歌詞がにあうような、かなり甘ったるいメロディだ。
まあ、だからこそへたくそな歌で相殺されて聴けるのかも。
6)LETHARGY
ジャムセッション中に出来上がったリズムトラックに、無理やりヴォーカルを載せたような曲。しっかりとリズムキープするドラムやベースにギターがからみ、その合間を縫ってヴォーカルが割り込んでくる、1分半程度の曲。
7)UNLEASHED!THE LARGE-HEATED BOY
デモテープのような、がしゃめしゃの音質ながら、けっこういかしたタテノリの曲。弾むベースを芯にして、ノリが引っ張られていく。この曲のヴォーカルもいまいちノリきれないヘタさがあるけども。
8)RED GAS CIRCLE
アコギによる弾き語りから始まる、デモテープ風の録音。中盤でかぶさってくるハーモニーとエレキギターがポイントだ。さりげなく入ってくるところがかっこいい。
脱力気味の素朴な曲。メロディはロマンチックなのにな。ぶっきらぼうに歌うことで、甘きにながれそうな曲のイメージを見事にぼやかしている。
9)EXIT FLAGGER
ちょっとドラムの演奏がドタバタするものの、メロディのよさに耳をひかれる。
演奏はシンプルなアレンジで、ヴォーカルを邪魔していない。
もっとも、歌声が聞ける時間は短い。あっというまにギターリフが前面に出てきてしまう。残念。
10)14CHEELEADER COLDFRONT
アコギとベースをバックに、甘いハーモニーで歌う。洗練されたきれいなメロディだ。カセットで取ったかのようなこもった音だけど、これこそしっかりした録音で聞いてみたいな。
飾りはなにもいらない。メロディの素性だけでうっとりしてしまう。
一分半程度の小品だけど、ずっと聞いていたくなるいい曲だ。
この曲は、トビンの名前が先にクレジットされている。のちに開花するトビンのメロディ・メーカーの片鱗が現れた瞬間かな。
11)BACK TO SATURN X RADIO REPORT
冒頭の空白でヒスノイズがえっらくめだつ。テープ編集を繰り返したカットアップの曲。さまざまな表情の曲が10秒おきくらいに、立て続けにつなぎ合わされる。
12)ERGO SPACE PIG
ヴォーカルにエフェクトをかけすぎて、カズーのようになってしまっている。
タムの連打が耳を引くパンキッシュな曲。基調はポップだけど、アレンジをひねくりまわして、奇妙な味わいになっている。
13)CIRCUS WORLD
いきなり録音がクリアになる。レコーディング予算を極端にわりふったのかな。
同じアルバムと思えないほど録音レベルに落差がある。
スローで少々雰囲気が重たい曲。アレンジはシンプルで、抑揚を抑えたメロディをしっかりと支えている。
14)SOME DRILLING INSPIED
重たく引きずるリズムに、起伏のなくシンプルなメロディ。盛り上がりを期待し聞いていくと、あっさり終わってしまって肩透かししてしまう。ひとつのアイディアが思い浮かんだ瞬間を凝縮した、さりげない一曲。
15)ON THE TUNDRA
魅力的なメロディが楽しい。シンプルなバックでハーモニーが可愛らしいポップス。サビでの盛り上がりがかっこいい。
にごった録音がアクセントとなって、とっつきの悪いところがあるけれど、かまわずに耳を傾けるとよさが浮き上がってくる。
終盤ではヴォーカルにハーモニーが絡み合いギターが割り込んで、ほんのり混沌として終わっていく。