Guided by Voices
Self inflicted Aerial
Nostalgia(1989:Halo)
Robert Pollard - guitar & vocals
Jim Pollard - guitar
Payton Eric - drums
Steve Wilbur - bass & guitar
with
Mitch Mitchell - bass
Kevin Fennell - drums
Bruce Smith - drums
GbV3枚目のアルバムは、前作同様Haloからのリリース。前作から約2年のインターバルをおいての発表となった。僕はこのアルバムも、ボックスセットで聞いている。
録音は前作から同様のスティーブ・ウィルバー(今回はベースとギターも担当)がつとめている。8CHでのガレージスタジオでの録音。
このアルバムでもがらっと参加ミュージシャンを変え、ミッチ・ミッチェルはアシスタント・ミュージシャンとしてクレジットされ、トビン・スプラウトの名前は影も形もない。印象としては、ポラードのソロアルバムだ。
本アルバムも全曲ロバート・ポラードが作曲し、何曲かで共作する形態。
バンドサウンドにアレンジされた曲もあるが、ロバートの個性や趣味が前面に出たアルバムなのかな。
全体にプライベートなイメージ。もっとも、デモテープ風の散漫さはなく、きっちりとアレンジされた曲がずらっと並んでいる。
前作の開放感とは対照的に、室内で聞くのにぴったりな曲が並んだって感じかな。1枚目、2枚目に続き、このアルバムもGbVの多彩な魅力のひとつを強調したデビュー盤って感じもするな。
<曲目紹介>
1)THE FUTURE IS IN EGGS
静かなドラムにのって、陰鬱なベースと低音のつぶやくボーカルが入る、かなり暗めの曲。しかし、ヴォーカルは自然に音程をあげていき、引っかくようなギターに乗って高く歌い上げる。けっこうドラマチックな曲。
最初は「こんなのでオープニングか。なんかぱっとしないなあ」と思ってしまったが、繰り返して聞くうちに、じわじわ好きになってきた。
2)THE GREAT BLAKE ST.CANOE RACE
前曲のトーンをほんの少し引きずるギターながら、ちょっとテンポアップ。
デュオ形式のツインヴォーカルのハーモニーが目立つ。微妙にピッチがあってない気がするのは、ご愛嬌。鼻にかかってだらっとしたメロディのリラックスした曲だ。終盤のギターの弾むフレーズもいい。
3)SLOPES OF BIG UGLY
パルス的な途切れ途切れのイントロで始まって、不安定さを強調した曲。
しかし、途中からドラムが入ってきてせわしなさが前面に出される。
メロディがちょっと一本調子なのがいまいちかな。
故意なのかもしれないないけど、中盤で録音ミス風っぽく音が激しくぶれる。
本来、この手の効果はアレンジの一環と考えるべきなんだけど。彼らの荒っぽい録音から、どうも録音ミスに思えてならないよ(^^;)
そして、カットアウトで唐突に終わってしまう。
4)PAPER GIRL
もこもこにこもった音質の録音で収録されている。フェイドインしたスラッシュ風に弾きなぐるギターが、いきなり編集でアコギ一本をバックのフォークにかわる。ハーモニーが楽しい。牧歌的なメロディのこの曲に、激しいイントロをくっつけるセンスがいかにもGbVだ。
しかし、この曲でも音がちょっとよれるなあ。本当に意図的なんだろうか。
5)NABIGATING FLOOD REGIONS
シングルが似合いそうなキャッチーなメロディ満載の曲。
ギターが唸るリフにのって、エコーを聞かせて歌う。
リズムは付点でたどたどしいながらも弾む。ほのぼのしてくる。
6)AN EARFUL O`WAX
内面にこもるかのようなメロディと、がらっと開放されるメロディの2種類が交錯する。そして4つ打ちのリズムに乗って駆け上がるサビに、SEが効果的な間奏のフレーズ、と聞きどころ満載の曲。4分あまりと、GbVには珍しく長めな曲なのもうれしい。次から次へと繰り出される、かっこいいメロディを堪能できる佳曲だ。
7)WHITE WHALE
ギターのつまびきとドラムによるあっさりしたイントロのあと、すぐにアップテンポな歌に引きずり込む。伸びやかでくっきりしたメロディを聞いているとわくわくしてくる。
ボーカルがもぐりこんでしまうシーンがある。きっちりメロディが変わる時点で、ヴォーカルの録音レベルが復帰するから、意図的なミックスなんだろうけども。こういう曲では素直に聞かせてほしいぞ。
高音で声を張る瞬間の歌声が、とっても魅力的だ。
8)TRAMPOLINE
アナログでは、ここからB面がスタート。
マーチ風のリズムは礼儀正しく、姿勢を低くしてで忍び寄ってくる。
リズム、演奏フレーズ、ヴォーカル、それぞれのメロディはきれいだ。
ただ、どこかちぐはぐにギクシャクしているように聞こえてしまう。
あと一歩、演奏の各要素を融合する何か、があれば名曲になるはず。
その要素の一つがミックス・・・なのかなあ。もうすこし、各パートがくっきりしてたらいいのに。リズムがはっきりしてるからこそ、音像がぼやけて聞こえる。
9)SHORT ON POSTERS
エレキギターのアルペジオにのって、すっとヴォーカルが歌い始める。
この曲は逆に、もこっとしたミックスとエコーがうまく働いている。思いつくままにキャッチーなメロディを繰り出すヴォーカルは、波間に漂っているよう。
2分に満たない小曲だけど、とってもいい曲。
10)CHIEF BARREL BELLY
前曲の雰囲気をがらっとかえて、重く引きずるギターに歪ませた歌声。
沈うつなイメージが漂うが、リズムが幾分軽やかなのが救い。
で、きれいなメロディだって、もちろんそこかしこで聞ける。
11)DYING TO TRY THINGS
ひずんだアコギ(かな?)の弾き語りであっさりと歌われる。
でもフォークののどかさはなく、どこかぎこちない緊張感が漂う。
この曲も一分強であっさりとおわってしまう。
12)THE QUALIFIING REMEMBER
ハムノイズを強調した、ジャムセッション風の演奏だ。走ったりもたったりするリズムで散漫にも聞こえるのに、この魅力的なメロディの歌声についつい引き込まれてしまう。ラストは再びハムノイズに戻り、唐突にカットアウト。
13)LIAR`S TALE
前曲のハムノイズから間をおかずに、軽やかなギターの和音で始まる。
エコーを聞かせて、ときに歪むヴォーカルがとても気持ちいい。バックはリバーブを聞かせたギターで、コードをさりげなく弾くだけ。
しばらくギター一本で雰囲気を盛り上げたあとにドラムやギター、コーラスが入るけれど、一瞬おずおずと鳴らしたあとは再びギター一本にもどる。
この間を生かしたアレンジがめちゃくちゃかっこいい。
14)RADIO SHOW(TRUST RTHE WIZARD)
見事にアルバムをしめるのは、アイディア満載のこの曲だ。テンポチェンジをさりげなく行いつつ、テープの逆回転を使ってみたり、アウトロをくっつけてみたり。
レコーディング中に思いついたことを、まとめてぶち込んでぐつぐつ煮た曲。
いくつかの曲から、美味しいところをちぎって貼ってるようにも聞こえる。
アルバムのエンディングにふさわしい、いい曲だ。