Guided by Voices

Sandbox(1987:Halo)

Robert Pollard - guitar & vocals
Mitch Mitchell - bass
Kevin Fennell - drums
Jim Pollard - guitar
Steve Wilbur - lead guitar on "Barricade" & "Can't Stop"

 デビューアルバムと同年の1987年にリリースされたアルバム。
 レーベルは前作のSchwaからHaloに変えている。両方とも地元のインディ・レーベルなのだろうか。資料がなくて、今ひとつわからない。
 ちなみに僕はこのアルバムも、95年に出たボックスセットで聞いた。

 メンバーがいきなり変更されている。前作ではゲスト扱いのスティーブ・ウィルバーとジム・ポラードが正式メンバーになった。
 プロデュースはGbVにスティーブ・ウィルバー(前作でもエンジニアをつとめた)。録音担当ということもあってか、スティーブが別格扱いでクレジットされている。
 作曲は前作同様、全てにロバート・ポラードがからみ、曲によって他のメンバーが参加する形だ。
 全体的にこのアルバムは、クリアな録音になっている。多少音がこもってはいるが、前作とは比べ物にならない。ただ、ところどころでしょっちゅう音がよれる。マスターテープに根本的な不具合があるようだ。オリジナルリリース時は、ちゃんとした音なのかなぁ。
 
 前作がデモテープ的な印象だっただけに、このアルバムこそがGbVのデビューアルバムという感じすらする。
 曲はライブを意識した、いかにもノリのいい曲ばかり。ライブ活動する際の名刺代わりかな。アレンジもバンドサウンドとして、よく練られている。
 アルバム全体を包むトーンは爽快感。前作で見せた実験的な側面は見せずに、ひたすらきれいなメロディを前面に出したギターポップのロックンロールを立て続けにかましてくる。
 アレンジを追い込んだ事前の緻密さと、勢いに任せて演奏するおおらかさが、うまくからまりあった好盤だ。
 
<各曲紹介>

1)LIPS OF STEEL

 一曲目はバンドメンバー全員による共作。ざくっとしてシンプルなギターリフから始まるアップテンポの曲だ。高音を歌い上げるヴォーカルを歯切れのいいリズムが支えるところなんか、いかにもライブ受けしそう。
 でも、ここで単純なイケイケの曲に仕上げず、脱力コーラスを絡ませたりするのがGbVの楽しいところ。ゆったりと長いメロディに爽快感がある。
 エンディング付近で音がよれるけど、本人らは気にならないのかなあ。

2)A VISIT TO THE CREEP DOCTOR

 前曲からメドレー形式でいきなり始まる。ちょっと音質がちがう(こっちのほうがちょっとこもってる)から、完全なメドレーに聞こえないのはご愛嬌。エンジニアの腕しだいなんだけどな。前曲同様、ライブ受けしそうな曲だ。こちらはたたみかけるようなメロディの曲。爆発せずに我慢しているような印象あり。もう一歩突き抜けると、とってもいい曲になると思うのに。

3)EVERYDAY

 一息ついてペースを落とすつもりか、アコギのストロークが印象的なミドルテンポの佳曲だ。ギターフレーズがどれもこれもかっこいい。ギター、ベース、ドラムがきっちり見事にアレンジされている。ヴォーカルもうきうきするような、きれいなメロディでいい。ヴォーカルが奥まったミックスなのがちょっと残念。中間部でちょっと演奏がモタるし。後半のオクターブ上げた「everyday〜♪」って歌い上げる部分が好きだなあ。

4)BARRICADE

 ゆるやかなエレキギターのアルペジオによるスローな曲、と思いきや駆け上がるようにスピードが上がっていく。スローとアップ、二種類のリズムを混ぜ合わせた曲だ。
 この曲のメロディもやわらかくていい。メロディに力があるから、リズムが変化するたびに、見事に曲は表情をかえていく。ヴォーカルも、ギターフレーズも魅力的なメロディが片っ端から顔をのぞかせ、あっというまに消え去ってしまう。

5)GET TO KNOW THE ROPES

 ダブル・ヴォーカルがぶつかり合う、奇妙な感触のメロディ。しょっちゅうヴォーカルが擦り寄っては、不安定な雰囲気を盛り上げる。バスドラの連打でもって、せわしなさを表現するアレンジだ。
 曲の中盤で、派手にテープがよれる。これをほったからしにしてリリースする辺り、大雑把なのか、それとも苦渋の選択なのか。前者の可能性が高いけども。
 エンディングになると、数秒間の空白のあとに演説のSEが挿入される。僕の英語力では、なにをいっているかわからないのが残念。

6)CAN`T STOP

 再びアップテンポの爽快な曲。せわしなく突っ走るアレンジがいい。ただ、どこか小品的な印象あり。メロディもきれいだけど、こじんまりまとまってしまった気がする。
 後半はもやもやっとした雰囲気で、フェイドアウトしていく。
 アナログ時代は、ここまでがA面かな?  

7)THE DRINKKING JIM CROW

 連続したギターフレーズに、ギクシャク狭い音域を上下するヴォーカルが絡むサイケ風味の曲。冷静にリズムを刻むドラムが、幻想的な雰囲気へ導いていく。

8)TRAP SOUL DOOR

 一分程度の小曲。メロディは滑らかだけども、曲のアレンジにこれといった特徴がなくて、さらっと聞き流してしまう。作成途中の曲から取り出した断片のような感じだ。  

9)COMMON REBELS

 ドラムのタム回しがまず耳を引く。2本のギターによるパルス的なリフを従えて、まずはアップテンポのメロディ。テンポを倍に落として、変調させた声で一息入れたのち、またスピードを上げて新しいメロディを歌い上げる。どのメロディも、個性的でポップなメロディだ。わずか二分の間に3種類の違うメロディを放り込んだ、贅沢な構成の曲。

10)LONG DISTANCE MAN

 多重録音されたハーモニーが、カウントにかぶってアコースティックギターをバックにいきなり歌い出す。
 とにかくメロディがとてもきれいで魅力的。一分少々で終わってしまうのが、まったくもったいない。こんなすばらしいメロディを使い捨てるなんて・・・。本アルバムの中では異色なアレンジの曲だが、ほっとくつろげるいい曲になっている。

11)I CERTANLY HOPE NOT

 曲中で行われるリズムチェンジがとても心地よい。どたどたとしたリズムからシンプルなエイト・ビートへ切り替わる瞬間がとてもかっこいい。
 アレンジがよく練られていると思う。大サビに向かってツインヴォーカルが効果的に歌い上げる、小品ながらはつらつとした曲だ。

12)ADBERSE WIND

 このアルバムの最後も、ドラムがあおるアップテンポの曲。アレンジの芯をリズムが占めている。ヴォーカルはアクセントを効かせて歌う。アルバムのトリをしめる曲という感じじゃない。もっともっと次の曲が聞きたくなってしまう。
 アルバムの構成をする時に「この曲で終わらせて、リスナーの渇望感をあおろう」とまで考えていたのか。それとも出来上がった曲をほとんど順番で詰め込んでいったのか。どっちもありうる。微妙なところだなあ。
 

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