Guided by Voices

DEVIL BETWEEN BETWEEN MY TOES (1987:schwa)

Robert Pollard - guitar & vocals
Mitch Mitchell - bass & vocals
Kevin Fennell - drums
with
Tobin Sprout - guitar & vocals
Peyton Eric - drums
Jim Pollard - guitar
Steve Wilbur - guitar
Phil Nicely - beatbox on 4

 GBVのデビューアルバム。おそらく地元のインディレーベルからのリリース。93年にドイツの”GET HAPPY!"レーベルからリマスターが再発、95年に”SCAT”レーベルからボックスセット(1st〜4thアルバムに、未発表曲集1枚を合わせた5枚組CDボックス。アナログは5thも収録した6枚組)で再々リリースされている。僕が持っているのも、このボックスセットのバージョンだ。

 1986年にデビューEPの"forever since breakfast"をリリースしているが、本アルバムには収録されていない。
 録音は87年の10月から翌年2月まで。オハイオにあるガレージ・スタジオでの収録。ほんまもんのガレージでレコーディングしたのかも。8CHで荒っぽく録ったことを差し引いても、もっこもこの素朴な音になっている。
 メンバーは、すでにのちの主要メンバーがそろっている。

 思いつきのようなインスト曲が含まれているせいもあり、デモテープ集にも思えてしまう習作だ。
 収録曲は、ロバート・ポラードが基本的に全曲を作曲。何曲かにメンバーが競作パートナーとしてクレジットされている。

<曲紹介>

1)OLD BATTERY

 軽快なリズムに乗ったポップなメロディが印象的な曲。
 2分もない短い曲なのに、パターンがころころ変わっていく。
 最後のサビでのコーラスが不安定だけど、妙に味があり。
 ハイハットのせわしない刻みが、いいアクセントになっている。

2)DISCUSSING WALLACE CHAMBERS

 ドラムロールとギターのガラガラ転がるイントロから歌に行く瞬間、すっと軽く間があく部分が特に好き。アレンジの要としてドラムが曲のムードを作ってる。甲高い歌声が、アップテンポなリズムをさらにあおってるような気もするな。
 この曲も2分足らずで終わってしまう。

3)CYCLOPS

 落ち着いたギターの爪弾きに乗って、ふらついた歌声が乗ってくる。メロディはむしろ単調だし、アレンジもシンプル。コーラスが執拗に「パン・・・パン・・・」とアクセントをつけるのみ。だのに、「CYCLOPS〜♪」と歌うフレーズがとても耳に残る。エコーの聞いたドラムが幻想的な雰囲気をかもし出してると思うな。

4)CRUX

 軽快に叩きつけられるリズムボックスの連打につづき、ギターのストロークが入ってくるインスト曲。コードをかき鳴らすギターと駆け上がるリフが絡み合う、とても威勢のいい曲だ。

5)A PORTRAIT DESTROYED BY FIRE

 ここにきて、5分以上ある長い曲が収録されている。ギター2本とベースがくねくねと絡み合うフレーズが二分以上続いた後に、ヴォーカルが登場。メロディよりもつぶやくように音をひとつひとつ置いて歌う。再び演奏が前面に出て、混沌としたままフェイドアウトしていく。
 これまで短い曲を叩きつけてきて、気分一新の効果を狙っているのかな。

6)3 YEARS OLD MAN

 こちらもインスト曲。もこっとした録音のギターによるアルペジオをバックに、ベースがメロディを取る。淡々と低音が旋律をつむいでいき、合計一分半ほどであっさりと終わる小品だ。

7)DOG`S OUT

 2曲のゆったりした曲で一息ついた後は、またアップテンポのヴォーカル曲だ。ちょっとしたテープノイズのあと、イントロなしに歌いだす。歯切れのいいギターの刻みに乗ってシンプルな歌詞を繰り返した後、サビでいきなり展開する瞬間がいい。 

8)A PROUD AND BOOMING INDUSTRY

 またもやインスト曲。音像の奥でリムショットのような音がアップテンポに叩かれ、ギターやベースの指慣らしのような爪弾きがくり返される。展開を期待したとたんに終わってしまう、ちょっと拍子抜けがする一分程度の曲。

9)HANK`S LITTLE FINGERS

 魅力的なメロディの無駄遣い、の賛辞がふさわしい曲。この曲もイントロなしにいきなり歌い始める。シンプルなミドルテンポのギター・ポップだけど、もっとリズムを早くしたら、さらにかっこよくなると思う。しょっぱなからきれいなメロディが歌われるのに、惜しげもなく次のフレーズへと変わっていってしまう、実にもったいない曲。  

10)ARTBOAT

 中音域にブーストした宅録の音が特に印象的だ。エフェクターでひしゃげたギターが、リバーブを聞かせてぐしゃぐしゃのコードをかなぐり捨てる。ギターソロのままで終わる、即興的な曲。30秒を過ぎた辺りで編集したようにも聞こえるので、えんえんテープを流して録音した音をつないだのかも。
 ノイズ・ミュージック的な味わいがある。エンディングでハウリングがきれいに響く。そして再びギターが、混沌とした音を投げ捨てて終わる。

11)HEY,HEY,SPACEMAN

 このアルバムのシングル候補曲(と、かってに決めてしまっているが)。
 頭から終わりまで、とてもキャッチーなメロディばかり。アレンジもコーラスを前面に出した爽やかなイメージだ。
 もこもこっとした録音でなく、かっちりとしたレコーディングならかなりヒットするだろうにな。いまいち演奏や歌が乱暴なのも残念。
 もっとも、この荒っぽさも魅力なんだけども。
 「LET`S GO!」と軽くあおったあとの、駆け上がるメロディがとても好き。
 イントロで音がちょっとよれて、微妙にフェードインした状態から始まるのがちょっと奇妙。もろにデモテープって感じもするなあ。 
 歪ませたギターが曲の後半になると、裏でちょっとおもしろいフレーズを入れている。これが重層的な魅力をこの曲に付け加えてると思う。

12)THE TUMBLERS

 前曲の後では、ちょっと印象が薄くなってしまう曲。ヴォーカルはつぶやくように歌うが、ギターを強調したミックスのせいで、今ひとつ耳を捉えない。はつらつとした演奏と溶け合っていない。
 でも、アップテンポの演奏と、ゆったりとしたヴォーカルが一体となってかもし出す奇妙なタイム感はおもしろい。

13)BREAD ALONE

 二本のアコギ(エレアコかな?)が、それぞれアルペジオと和音弾きを受け持つインスト曲。ヒスノイズが前面に出たがさがさの録音だ。甘さのあまりない、背筋をピンと伸ばして毅然とした演奏だ。これも一分程度で終わってしまう小品。ちょろっと演奏がずれるのはご愛嬌。

14)CAPTAINS`DEAD

 霧笛のSEの後に、ギターを前面に出したアップテンポのロックンロールが、どかんと始まる。きれいにハモるツインヴォーカルがとてもかっこいい。メロディはひとつのモチーフを微妙に変化させたのみ。シンプルな構成だけれども、ぴたっと張り付くツインヴォーカルが歌うことで、見事に曲の魅力を引き出している。このアルバムのトリを飾るのにふさわしい曲だ。 

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