Guided by Voices

Life Starts Here/Airport 5(2002:fading captain)

All Songs written by Robert Pollard & Tobin Sprout

Tobin Sprout - All instrumentation
 (Recorded at Petrified Fish - Leland,MI)
Robert Pollard - vocals
 (Recorded by John Shough at Cro-Magnon studios - Dayton,OH)

 ロバートとトビンのユニット、エアポート5の2ndアルバム。前作から間を置かず、すかさずリリースされた。
 作曲は二人のクレジットで演奏がトビン、歌がロバートという分担は前作どおり。
 毎回書いてるが、主旋律の作曲分担はどうなってるんだろう。
 メロディラインを聴く限り、ロバートぽいメロディと、トビンらしいメロディが混在してるが・・・。

 演奏はたぶんトビンの宅録。ほんのりこもっても、チープさはあまりない。マスタリングの勝利だ。
 ほとんどが生演奏っぽいが、曲によって打ち込みリズムを使ってる様子。

 メロディメイカーな二人だが全てをポップス仕立てでなく、サイケでとりとめない曲も織り込んだ。
 毎度のことながら、練って作った感じじゃない。一筆書きのアイディアを素早くまとめたっぽい。
 ときおり挿入されるキーボードやシンセは、ふだんGbVに無い要素で新鮮に聴こえる。

 いわば二人の交換日記。
 ・・・でもこう書くと、中年ミュージシャン同士の交流を例えるのにふさわしくないね。

 どちらも個性の強いミュージシャンだが、完全分業が上手く働いたか不思議とまとまってる。
 作りこみに気負ったりせず、日常のある瞬間を切り取った、作曲によるスナップ写真集を見てるようだ。

 肩の力を抜いて楽しんだほうがいいアルバム。
 惜しむらくは1stの"Total exposure"みたいにキャッチーな曲がないこと。すくなくともぼくにとっては。
 したがってどうしても、地味って先入観を持ってしまった。
 
 だからこそこの盤が「スナップ写真」って印象なんだ。
 彼らの最大の美徳である、息をするように作曲する姿勢が産んだ、なにげない日常のアルバムに聴こえた。
 
 たとえばLifeguardsなら、もうちょっと作りこむだろう。
 なのにトビンはそうしない。投げっぱなし。
 ボブのことを、とことん信頼してるのか。どういうアレンジでも、二人の音楽が成立すると信じてるのか。

 変な話、ぼくはこのアルバムを愛聴しないだろう。だけど忘れちゃまずい作品。そんな気がする。

<全曲紹介> 

1. INTRO

 二人とも根がボーカリストなのか、本作にインストは一曲もない。
 不穏なピアノによる緊張した単一のリフにのって、ロバートが朗読する。
 微妙にメロディあるが、これも譜面に書いてるならたいしたもの。

 時間にしてわずか一分。
 文字通りの幕開け曲だ。

2. WE'RE IN THE BUSINESS

 単音でオブリを弾く、のどかなオルガンがいいアクセント。
 ドリーミーなメロディが似合いそうなのに、ロバートはあえてはずし技できた。
 モタった感じでメロディを肉付けする。

 最初は淡々と呟くように。しだいに旋律は起伏が明らかになり、ラスト間際では耳ざわりのいいサイケポップへ。
 芽吹くようにメロディが進化した

 演奏はかまわず冒頭から、ほんのりほのぼのムードのまま。
 だからこそ歌声のドラマティックな構成が面白い。

3. YELLOW WIFE NO. 5

 トビンっぽいメロディの曲。キャッチーなふりして、どこか陰がある。
 曲自体はさほど盛り上がらず、Aメロとサビが交互に数度、登場するだけで終わっちゃう。
 
 コードの変化はほとんどなさそう。ギターが淡々とリフを刻む。
 イントロで何回か聴こえるハウリングは・・・わざと残したんだろうな。

4. WRONG DRAMA ADDICTION(...And the life stars here...)

 副題のとおり、アルバムタイトルになった言葉を執拗に歌う。
 メインのボーカルは語りから、思い切りディレイを振った唸るようなメロディへ。こういう構成はいかにもロバートっぽい。

 ボーカルはかなりブーストされ、宅録風にラフに作った。
 バックの演奏はハイハットと、低音のみが強調されたベースラインのみ。
 ときおりギターがかすかに刻む。そしてラストにシンセをぱらり。

 冷静に聴いてて、かなり奇妙なアレンジだと気が付いた。
 こういう曲にタイトル・フレーズを乗っけるか。
 思いっきりやりっぱなしのセンスだな。

 かれらにしては長く、7分ものあいだ続く。
 もっとも最後の数分はハムノイズが流れるだけ。奥のほうでかすかにうごめく音も。 
 メロディよりも音色を聞かせる、音響的なアプローチ。
 とはいえそこまで考えてるか怪しい。

 「こういうノリもいいんじゃない?」とビール飲みながらあっさり決めてる気もするなぁ。

 最後に印象的なエレキギターが鳴り、期待させてそのままフェイドアウト。・・・なんなんだ。 

5. HOWEVER YOUNG THEY ARE

 数本のアコギと、シンプルなパーカッション。
 メロディもきれいだし、ほんとならキュートなポップスに仕上がってたはず。
 だけどいかんせん、ロバートのボーカルが不安定なんだよ。これも味ではあるんだが。

 前の曲が長かったから、ペースチェンジの意味も込めてるのかな。
 あまりひねらず、シンプルなフォーク・ロック。
 エンディング近くで、ほんのりリバーブをまとって歌い上げるロバートの声は、さすがにかっこいい。

6. THE DAWNTRUST GUARANTEE
 
 変調させたロボットのような声。残念ながら何を喋ってるのか、ぼくのヒアリング力ではわからない。
 ノーリズムで淡々と喋る。音楽に変化するかと期待したらダメだよ。最後まで語りで終わってしまう。

 この曲、トビンはどう「作曲」したんだろう。単なる音風景に、ロバートが苦し紛れの語りを乗っけたかっこう。
 さすがに1分強、短い時間で終わる。
 
7. FOREVER SINCE

 一転してキャッチーなメロディになるあたり、いかにもGbVらしい。
 こんどもフォーク・ロックのタッチ。
 軽くドラムも入り、まとまった出来だ。こんどはロバートの声も安定してる。

 シングルになるとは言わないが、よくまとまった佳曲。
 中間部、ハミングのところでピッチがすげえ甘いんだ。
 これさえなんとかなってたら、名曲だって言えたのに。

8. IMPRESSIONS OF A LEG

 この曲も楽しい。ロバートの歌い上げメロディがばっちり出てる。
 へんてこなミックスで、歌のリバーブがかかったり生声になったり。
 フレーズが紡がれるのとリンクして、ゆらゆら揺れる。

 バックの演奏はいちおう3リズムだが、妙に平板な音質だ。
 鉄板に張り付けられた書き割りみたい。ちょいとリズムの切れが悪い。

 サイケ路線を狙ったか。2分ちょいの短い曲だが、印象に残る。

9. HOW BROWN?

 比較的ノーマルなロックだと思う。そのせいか、あまり耳に引っかからない。
 メロディはきれいだが、あまりにシンプル。着地点を探すうちに時間が経過してしまう。

 エンディングはセッションの後風景を表現してるの?なんだか必要以上に延々と続く。
 もし完成度を求めるならタラタラしたインスト部分を削って、いきなりピアノの箇所へつなぐべき。
 だけど余剰分も含めて、彼らの音楽なんだよなあ。

10. NATIVES APPROACH OUR PLANE

 とっちらかった印象が面白い。サビのハーモニーと無関係にロバートがメロディを唸った。
 ほんのりひしゃげたロバートの声は、サビと同じフレーズを歌っていてすら、どこか違和感を残す。

 演奏はごくシンプル。うっすら聴こえるオルガンの音色が、バックに暖かさを与えてる。
 焦燥する熱気を感じた。

11. I CAN'T FREEZE ANYMORE

 サビのフレーズが冒頭から連呼された。構造は前曲と同じ。だけど今度は普通のメロがサビと関係してる。
 いやに声へリバーブを乗っけてるな。

 演奏は打ち込み?トビンの演奏って、こういうタイトなビートが良く出てくる。
 手弾きならよっぽどリズム感いいんだな。

 曲の出来はいまいち。盛り上がりに欠けた。

12. OUT IN THE WORLD 

 お気楽に鳴るシンセがアクセントとなり、ギターがリズムを同調させる。
 個々のメロディは悪くない。だけどやりっぱなし。もうちょい煮詰めたら、いいポップスになりそう。もったいないなー。

 楽器はひこひこ言うシンセのほかは、エレキギターくらい。しごくあっさりしてる。
 シンセとギターはてんでに好きなことをしてるようだ。
 
 ある意味、デモテープのような作品。
 これでアルバムを締めくくるとは。いかにもボブとトビンの音楽を表現する、いいサンプルとも言えるか。

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