Guided by Voices

"Heaven Beats Iowa" Cub Scout Bowling Pins (2021:Guided By Voices Inc.)

Vocals, Guitar, Artwork - Robert Pollard
Bass, Vocals - Mark Shue
Drums, Vocals - Kevin March
Guitar, Vocals - Bobby Bare Jr.
Guitar, Vocals - Doug Gillard
Producer,Engineer,Mixing - Travis Harrison

 うっすら懐古趣味なサイケ・ポップ。
 2019年と20年にガイディッド・バイ・ボイシズはそれぞれアルバム3枚リリースの偉業を達成。2021年もアルバム2枚をリリースする。それだけでも十分な発表量なのに。
 2021年にボブは本バンドでEPの本作と、アルバム"Clang Clang Ho"を発表。結果としてGbVはこの年もアルバム3枚リリースしたようなもの。

 リリース・タイミングは、まさに怒涛。
 2020年12月にGbV"Styles We Paid For"を出した後、翌1月に本作を発表した。
 さらにGbVで"Earth Man Blues"を4月にリリース、本ユニットでアルバム"Clang Clang Ho"を出し、10月に"It's Not Them. It Couldn't Be Them. It Is Them!"をGbVで繋げたんだから。

 ロバート・ポラードは本作でCub Scout Bowling Pinsって別ユニットを、思い付きもしくは気分転換のように稼働させた。
 メンバーはガイディッド・バイ・ボイシズ全員に、近作で録音やプロデュースを担当のトラヴィス・ハリソンが参加してる。

 すなわち、もはや本体と何が違うんだって布陣。GbVのブランド・イメージやライブ活動を考慮しない、実験的な曲を演奏ってコンセプトか。
 ある意味でかっちりまとまり気味な近年のGbVが、往年のローファイで奔放なスタイルを取り戻した作品ともいえる。

 ライブ映えする曲もある一方で、デモテープへアイディア・スケッチに毛の生えたような、ざらつくうねる曲群。こういう一筆書きな作曲術もボブの持ち味。
 いっぽうできっちりバンド・サウンドにアレンジされており、でっち上げ感は低い。
 歳を重ねても枯れず、守りに入らない。奔流なボブの活動を追うのは、とても楽しい。

<全曲感想>

1. Hobson's Beef 1:56

 もごもごと唸るようなイントロから、だんだん助走が加速してパワーが充填されていく。 
 デモテープに毛が生えたような音質で、ボブは一筆書きでメロディを紡いだ。ドラムやギターが次第に加わり、途中でブレイクも挿入。
 無秩序なボブの歌声と、バンドの相克がチグハグ気味の魅力を滲ませる。

2. Gear Balloon Mousetrap 1:36

 高めの音域でエレキギターがさらりとサイケ寄りのイントロ。歌が始まったら、瑞々しさをメロディに含ませた。だけど歌声はけっこう荒っぽく、音程も時々怪しい。
 なのでせっかくポップに仕上がりそうだけど、とっ散らかった危なさをまとってしまった。いかにもボブらしい無駄遣いなありさま。
 終盤で音色にエコーが足されたり、あれこれ細工も施された。この辺がトラヴィスの功績か。

3. Moon Camera 2:09

 この盤の曲はイントロがどれもいただけない。聴いてるうちに、これも味わいだと耳へ馴染んでいくけれど、最初はどれもダルく無造作なしぐさ。
 本曲は裏拍効かせた弾みっぷりが、ルーズなしぐさと混ざるあやふやさが聴きどころ。
 さらにマリンバ音色の鍵盤が、奇妙にテクノなタイトさを挿入して、ノリの複雑さに寄与した。
 ボブの無邪気なアイディアを、バンドとして装飾。ギター弾き語りでも成立するところを、バンド・アレンジで膨らませた。

4. School School 1:16

 歯切れ良い炸裂がかっこいい曲。ライブ感ある一体感で疾走した。だがボブは歌を乱雑に配置。
 メロディを歌わず、断片をまぜこぜ、強引に繋げたかのよう。さらに終盤はテープ回転数が遅くなるような効果まで入れて、むりやり曲を終わらせた。わずか80秒足らずの曲なのに、ずいぶん盛沢山。

 この曲はステージで映える。生演奏ならではの力業で、きちんと歌ったらいい曲だと思うよ。
 ドタバタするドラムの縦線が微妙に他の楽器と合ってないような。パッチワークめいたノリが楽しい。

5. Funnel Cake Museum 2:25

 波打つように畳みかけるギターのイントロから、ドラムが入った。50秒くらいかけてじっくり。2分半の曲だから、半分近くをイントロに費やした。
 跳ねてしゃくるようなメロディは、シンプルなロックンロール。ギター・バンドで力押しせず、掛け合いに電子音みたいな遊びを入れるアレンジが耳に残る。
 平歌とサビって構成を取らず、そのまま雪崩れるように幕。

6. Heaven Beats Iowa 2:49

 オルガンとしゃっきりしたリズム、おっとりしたテンポ感に60年代サイケ・ポップを連想した。クラップやタンバリンのアレンジも含めて。
 安っぽくも懐かしめなメロディを淡々とボブが歌う。ライブ感より、スタジオ作業で追い込んだ。サビでコーラス隊が入るように、ぐわっと盛り上がるところもいい。
 ローファイ気味だが各楽器を分離良くミックスした。すると他の曲のぐしゃっとしたところも意図的な演出だな。
  (2022/7:記)
 

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