Guided by Voices

Motel Of Fools
/Robert Pollard(1996:The Fading Captain)

Produced by Robert Pollard
Engineered by John Shough
Assisted by Tony Conley Jim Pollard

Robert Pollard - g,vo,ds on 1
Johnny Strange - b
Jim Macpherson - ds

John Shough - p on 2
Nick Kizirnis - lead g on 1
Greg Demos - intro on 3,backward g on 6
Don Thrasher - ds on intro to 3
Tobin Sprout - Backword lead g on 3
Rat Bastard - g and radios on 6
Chris Slusarenko - p on 6
The Original Anacrusis - live jam on 6
Extras - Gibby and Geo

 ロバートの4枚目ソロは、一聴して地味なつくり。音が全体にこもり気味だ。
 スタジオのクレジットが見当たらないけど、たぶんデモテープなみにさくっと録音したのでは。
 
 メンバーの選定も変わってる。基本はロバートのほかに二人。
 まずフルで参加は、GbVの前ドラマーだったジム・マッキャンと、ロバートの2ndソロなどに参加してたジョニー・ストレンジ。

 もっともバンドサウンドって印象はあまりない。
 むしろロバートの弾き語り色が強く、ほかの楽器はあくまでアレンジの必要性に迫られ、ダビングしたかのよう。 
 ドラムなんてほとんど目立ってないもの。

 そんなこじんまりした作品が5曲。
 あとはGbVの旧メンバーや、ロバートの音楽仲間を集めて録音したとおぼしき(3)と(6)。
 収録時間が30分強で、わずか7曲。さながらEP盤ってとこ。
 アナログも1000枚限定で発売された。

 ロバートの創作力なら、この手の作品は山ほどできるはず。
 この時期に発売しなきゃいけなかった必然性は、あまり感じられない。
 さくっと作って、さくっとリリース。そんな気軽な一枚じゃないか。
 
 カバーのコラージュもロバートの作品。ほんのり荘厳な雰囲気が漂う。
 メロディメイカーっぷりはもちろん健在。
 派手さはないが、噛み締めるほどに味が出る旋律がいっぱい。
 ただ全体を通してみたら、実験的な曲のほうが自己主張してるかも。

 ちなみに。本盤が届いて数週間後に、ルナから一枚のCDが届いた。この盤の差し替えだ。
 初回盤は、曲間に意図しないブランクが2秒入ってたとのこと。
 新しいやつを聴いてみたが、(2)と(3)の間や(6)と(7)の間は自然につながり、トータル性が強調されてる。
 単なる羅列ではなく、ロバートはかなり流れを意識して本盤を編集してたんだ。

(各曲紹介)

1. IN THE HOUSE OF QUEEN CHARLES AUGUSTUS


 ロバートがくぐもった声で、同じフレーズを幾度もうつろに歌う。
 ぷっと切れ、サイケなイントロが飛び出す瞬間はスリリング。
 この曲でドラムを叩いてるのはロバート自身だ。
 もっともタムをたまに鳴らしてるくらい。ドラミングとは言いがたい。

 そのためほぼドラムなし状態で、アコギのストロークとシンセ風の音色が空間を埋め尽くす。
 ロバートの声はあくまで曇りなく、滑らかに歌い上げる。
 メロディもなかなか美しい。
 
 すがすがしい雰囲気だ。あっけないエンディングが惜しい。

2. CAPTAIN BLACK

 ギターをかき鳴らしつつ、ロバートはじっくりメロディと向き合う。
 こじんまりした小品で終わりそうなメロディだが、存在感がある。これはアレンジの勝利でしょう。

 スローなビートを支えるのは、リムをスティックの腹で叩くドラムと、音数少ないベース。
 このベース、メロディに寄り添うすてきなフレーズを弾いている。

 ジョン・ショウによる、効果的なピアノソロが聴きもの。
 しかし後半で、かなりアンサンブルがよれて聴こえるんだけど・・・ぼくの気のせい?
 このピアノ、たぶんオーバーダブだと思うんだが。

 シングル・カットにぴったりな名曲。

3. RED INK SUPERMAN

 GbVの重鎮(と、ぼくが勝手に呼んでいる)トビン・スプラウトが形容矛盾で参加した。バッキング・リードギターって、いったいなんだ。
 
 ドタバタうろつくようなSEへ、脈絡なく女性の艶かしい声が一瞬かぶる。
 フェイドインで入るのっぺりしたギターがグレッグ・デモスかな。
 ここまでで約1分45秒。

 そしてメドレーで次のブロックへ入る。ほとんどイントロに意味がないとこがすごい。いかにもやりっぱなしのロバートだなぁ。

 トビンが弾いてるのはこっちだろう。リフと、その後ろで、じわーっとハムノイズみたいなギターが、かすかに聴こえる。後ろのドローン・ギターがトビンだろうか。
 ギターソロが奇妙だ。鳴ってるんだけど、一瞬音が消え去る幻想が見えた。
 
 メロディはさほどでもない。とっちらかった構成のほうが面白いかな。 

4. THE VAULT OF MOONS

 ベースが入ってはいるが、基本はギターの弾き語り。歌が入るまで50秒くらいかかる。
 思い切り両隅にギターを定位させ、真中はボーカルとソロを弾くリードギターだけ。
 すごく極端なミックスだ。

 調子っぱずれなギターソロに戸惑う。
 声はひしゃげ気味。SEも挿入される、手探り状態の作品。
 ロバートが一人であれこれ試行錯誤しつつ作り上げたのでは。

5. SAGA OF THE ELK

 前曲みたいな実験的な作品の後、きっちりアレンジしたこれをもってくるんだから。
 しっかりバランス感覚あるんだよな、ロバートは。

(2)と同様、ドラムとベースが寄り添ってロバートを支える。
 ときおりシュワシュワっと震える声は、子音をエコーで加工してるの?
 この効果が、ストレンジな空気を漂わすのに役だった。

 メロディはいい線いってるが、ロバートの才能なら並レベル。
 演奏につられてそのまま聴いちゃうけどね。

6. THE SPANISH HAMMER

 メドレー形式の大作。といっても7分弱と短い。あんがいめまぐるしくブロックが変わる。

 A. She Drives Camaro
 ノーリズムで呟くように歌う。低音でもロバートの歌声をなぞり、不穏さを強調した。ほぼ一本道のシンプルなメロディだ。

 後半で歪んだ音色のエレキギターが、むやみとかきむしる。
 ラジオっぽい声が小さくダビングされてるみたい。

 B. Lift
 "She Drives Camaro"からメドレーで突入。
 ブーストされた声がシャウト。あっけなくこのブロックは終わる。

 C. Love Set
 今度は明確なぶつ切りあり。きれいなピアノにのって、ロバートが歌う。
 この部分のメロディはけっこう好き。
 ピアノの弾き語り状態で、ムードが穏やかなせいかも。

 しかしかなりひずんだ音だ。こういう音で録音するのがいかにもロバートだなぁ。
 
 最後は虫食いみたいな音が侵蝕してくる。

 D. Wildlife Energy
 最終ブロックのバッキングは、その虫食いみたいな音。
 ラジオやテープの逆回転や。あれこれ取り混ぜているようす。

 クレジットにあるThe Original Anacrusisがジャムをしてるのも、たぶんこのブロックだろう。
 メロディは特に特徴なし。
 
 Cブロックだけで一曲をじっくり仕上げて欲しいと考えるぼくは、ロバートのファン失格でしょうか。うーむ。

7. HARRISON ADAMS

 ラジオのコラージュがイントロ。オハイオがなんちゃら、って言ってるようだが、ぼくのヒアリングでは意味不明・・・残念。

 このアルバムで一番好きな曲。アンサンブルも決まってるうえ、なによりメロディがいとおしい。

 バックの演奏はかなり控えめ。ドラムが比較的大きくミックスされてるかな。
 シンバルは勇ましく鳴らし、バスドラを着実に踏む。

 サビ前で一瞬ため、ふわりと浮かぶメロディが素晴らしい。
 アルバム最後を飾るのにふさわしい曲。
 エンディング間際で聴ける、ロバートの多重録音によるリフレインもいいぞ。
 
 最後の鼻歌や喋り声はスタジオでの会話かな?これはちょっと蛇足では。
 まー、こういうぶちこわしな構成こそ、アバウトなロバートらしい。
 アルバムの冒頭がロバートのアカペラだったから、最後も人の声で〆たのかもしれない。

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