Galaxie 500
・・・Luna & Demon&Naomi

Lunapark/LUNA (1992:Elektra)

Dean Wareham - g,vo
Justin Harwood - b,Backing vo
Stanley Demeski -

Produced by Fred Maher
Engineered by Lloyd Puckitt
Assistant Engineer: Susanne Dyer
Recorded and mixed at RPM studios, NYC

Grasshopper- extra electric guitar on "Slide", "Hey Sister", "I Want Everything"
Kramer - piano on "I Want Everything", Hammond Organ on "We're Both Confused"
David Kleiler - electric guitar on "Time To Quit"
Sarah T. Walker - backing vocals on "Smile"
Fred Maher- acoustic guitar on "We're Both Confused"

 ルナのデビューアルバムは、ギャラクシー解散から2年後。
 デーモン&ナオミの活動からわずかに遅れ、独自にバンドをつくって復活した。
 メンバーはどういう縁で出会ったんだろう。
 正直、この時代はリアルタイムにルナを聴いておらず、その辺の事情には詳しくない。

 音像はギャラクシーの面影を引きずった部分と、ギャラクシーを乗り越えよりポップに進もうとした部分の両方が混在する。
 手探りで個性を見つけ出そうとした、通過点的な作品かな。

 各曲の出来は、めちゃくちゃすばらしい。聴いていてわくわくする。
 すきとおるディーンのギターが堪能できる傑作アルバム。

 ゲストにクレイマーがキーボードで参加。クレイマーのファンとしては単純に嬉しい。
 作詞は全てディーン、作曲は前曲がルナ名義になっている。

<曲目紹介>

1.Slide

 ベースの爪弾きから始まるが、ディーンのギターが飛び込んできた瞬間に、彼らの音世界に持っていかれる。
 ギャラクシー風味を一番残した曲だと思う。

 透明なギター、たどたどしいボーカル、ふわふわ漂うメロディ。
 全てがいとおしい。
 小さな音でミックスされたハーモニーが優しく耳に染みとおってきた。
 女性ボーカルに聴こえるんだけどな・・・ジャスティンの声かなあ。

 しゃっちょこばったギターソロが、心地よい。
 ふっと立ち止まって、そのまま聴きつづけたくなる名曲。

2.Anesthesia

 重心をふわりと持ち上げた曲。
 ディーンの喉は、なんともかぼそい。
 軽快に転がりながら進んでいくポップソング。
 数本重ねたギターソロが聴きものだ。

3.Slash Your Tires

 ボトムを効かせてイントロが始まる。
 どこか甘さが漂うあたり、いかにもディーンらしいけれど。
 フレーズをつなぎ合わせて、長い旋律で流れつづけるギターのリフが好きだ。
 
 サビの部分はスネアの連打にのってメロディが優しく弾む。
 キュートな魅力を持った曲。

4.Crazy People

 スローに漂うリズム。バラードのようにしっとりとせずに、リラックスして流れる雰囲気かな。
 フレーズを絡み合わせる2本のギターに、着実に刻むドラム。
 ベースは身を隠しながら、底を支える。 

 ひずませた音色で展開していくギターソロがいい。
 くるくる舞いながら、ぱぁっと広がっていく。 

5.Time

 ぽろん、ぽろんとさりげなく鳴るピアノが、とびきりのアクセントになっている。
 ボーカルはいまひとつぼんやりしてるけど、ギターソロはくっきり。
 ステップを踏みながら、下降してくる。
 二分足らずの小品。

6.Smile

 リズムは他の曲とあまりかわらないミドル・テンポなのに、妙にハードなイメージでせまってくる。
 この曲が一番、新しいディーンの音楽といえるのではないか。

 たっぷり溜めて、ぐぅんと弾むベースの音がおもしろい。
 ギターソロはほんのりパンキッシュ。
 エンディングは、たっぷりアンプのハムノイズをばら撒いて去っていく。

7.I Can't Wait

 ジャスティンが裏でしっかりユニゾンし、ディーンのボーカルを支える。
 ほぼデュエットスタイル。ミックス・バランスは、圧倒的にディーンの声ばかり聴こえるけど。

 前につんのめりながら駆け抜けていくロックンロール。
 三者三様に歯切れのいい演奏なのに、どこかほのぼのした音像になってしまうのはなぜだろう。
 
 演奏・ボーカル共に、きっちりまとまった佳曲。

8.Hey Sister

 裏声っぽく甲高い声で歌い始める。
 間を活かしたアレンジ。だからこそ、ぐしゃぐしゃな音色のギターソロが切り込んだ瞬間、一気に音像が変わった。
 その変化点は、かなりスリリングだ。

 ノイジーなギターソロが最後まで印象に残る。

9.I Want Everything

 泡がそこかしこではじけるかのように、2本のギター、ベース、ドラムそれぞれが別のタイミングでアクセントを取り合う。

 クレイマーはピアノで参加しているが、後ろでかすかに弾くのみ。それほど目立たない。

 なめらかなボーカルを中心にして、さまざまな楽器がわずかな瞬間浮び上がり、消えていく。
 細かいところまで練り上げられたアレンジだ。

 実はこれまでこの曲は、すっと聴き流していた。
 だけど今回じっくり聞いてみると、さまざまな要素を絶妙のタイミングで出し入れしている。その芸の細かさに唸った。

10.Time to Quit

 パワフル。とてもパワフル。
 熱くはならないけど、ぐいぐい前に踏み出してくるテンションの高い曲。
 本曲も、ほぼジャスティンとのデュオ曲と言っていいだろう。

 3人が揃ってユニゾンで駆け上がるリフがいかしてる。
 メロディは生き生きしているし、リズムもタイト。
 しかし・・・おもしろいことに、この曲もどこか甘いイメージが残っている。

 エンディングでは全ての楽器が細かく刻みだし、分厚い音像で迫ってくる。
 かっこいいな。

11.Goodbye

 一転して、ほのぼのリズムにチェンジする。
 アルバムの曲順は、よく言えばバラエティ。あえて言えば、とりとめがない・・・。
 曲の流れを意識して組替えたら、かなり勢いのあるアルバムになったよ。

 ギターソロが高音でキラキラしたフレーズを振り撒き、幕を下ろす。
 なんかあっけない終わり方をする曲。

12.We're Both Confused
 
 フェイドインからスタート。曲全体に一貫性を持ったグルーヴがある。

 サイケな感触は、この曲が一番。
 作曲は個々のフレーズをつなぎ合わせた、断片的な印象が強い。
 でも、セッション風の生々しさが、繋ぎ目をきれいに解け合わせている。

 クレイマーのオルガンは、ソウルフルにバックで騒ぐ。
 ディーンのボーカルは控えめ。サウンドの一要素になっている。
 この曲での主な魅力は、さまざまな楽器同士の会話が生み出すふっくらしたノリかな。

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