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のんびりてきとー日記です。 ちなみに過去の日記はこっちです。

大滝詠一 訃報。
すごいショックだ・・・なんてこった。いろんな意味で、日本のポップスに影響を与えた人だった。
例え新作を発表しなくても。旧譜のリイシューのビジネス・スタイルでも。もちろん再発ビジネスにおいても、日本におけるアメリカン・ポップスへの理解の点でも、日本歌謡曲の再評価視点でも。

なんてこった・・・。スペクターより先に逝くとは。来年321は"Each time"の30thエディション。

マスタリングが終わってたか不明だが、レイクサイドがビッグ・エンディングならば。またこれが伝説になりそうだ。

こないだ、ホレス・シルヴァーの訃報は誤報との情報あった。大滝の訃報も誤報ならいいのに。
2013年12月31日 13時32分11秒
Ludwig Afonso
ラドウィグ・アルフォンゾはマイアミ出身のドラマーで、ニューヨークに拠点を移したのちにスパイロ・ジャイラのツアーヘ参加した経歴を持つ。たまたま、彼のドラミングが耳に残った。

ヘルシーなピアノ・トリオは好みじゃない。どっかしら異形感が欲しい。丁寧でもロマンティックでも、もちろんヘンテコでも。ただ指が回るだけだと、体操の演技を聴いてる気分になる。いっそテクニックひけらかしのハード・ロックやプログレまで行ってくれたら清々しい。
フュージョンに最近興味持って何枚か聴いてみたが、ピンとこなかった理由がようやく分かった。テクニカル追求ならまだ聴けるが、スムースやリラックスを追求な盤だと馴染めないようだ。どうしてもぼくは、音楽に毒や異世界感や新奇性を求めてしまう。

ということで聴いてたのがエルダー・ジャンギロフ"Breakthrough"(2013)。キルギス系アメリカ人で本作が8thのリーダー作。87年生まれというから、若手の有望株らしい。
だが今いち、ぼくは彼のピアノに馴染めなかった。指が恐ろしく回るが、上品に過ぎる。猛烈な疾走でもテクニックへ裏打ちされ、スリルがまるでない。絶対破綻しない名人芸を聴いてるかのよう。
本盤ではレディオヘッド"Morning Bell"を取り上げ選曲面でも面白そうだが、ぼくはレディオヘッド聴いたことないしなあ。

聴き流そうかなと思いきや。なんかドラムがカッコいい。それが、上記のラドウィグ・アルフォンゾ。ピアノ・トリオのドラムはさりげなく自己主張が好み。要するにこじんまりまとまったコンボは物足りない。
かといってシンバル連打は喧しくて嫌だ。ハイハットとリムを上手いこと使うドラミングが好み。

本盤のアルフォンゾはかなりシンバルを多く打つ。やっかましいが・・・ちょっと跳ねる感じが良かった。
ピアノに引きずられて手数も多い。だが連打や乱打じゃなくアクセントや譜割を意識したテクニックぶりが逆に耳を惹かれた。そうですぼくはドラムだとテクニシャンが好き。

興味を持ってアルフォンゾを検索すると、ヤマハの頁に行き当たる。エンドース契約かな。
http://www.yamaha.com/artists/ludwigafonso.html

実演奏を、とYoutube見た。アルフォンゾのソロやスパイロ・ジャイラとの音源が聴ける。しかし不思議だ。ぴんと来ない。なにが違うんだろう。もう一度、ジャンギロフを聴きなおそう。

唯一、かっこいいと思った音源はマイアミ大学でのクリニック。プログレなテープに合わせて叩きまわるさまが、いかしてた。http://www.youtube.com/watch?v=7q9oEVGrFPo
2013年12月29日 10時53分14秒
ゼロ・グラビティのメイキング
原題"Gravity"をこないだ見に行った。3D酔いしそうなほど凄い、宇宙空間の描写にしびれた。
いったいどうやって撮影を・・・?と思ってたら。メイキングがYoutubeにあり。 http://www.youtube.com/watch?v=Zm5zuntAd5M

ワイヤー吊りとカメラの動きをコンピュータ制御、さらに役者側も動かしてた。あれで独特の浮遊感を出してたんだ。もちろん、CGバリバリ。撮影シーン見ると、サンドラ・ブロックは演技と言うより、撮影素材を撮ってるかのよう。演技の上へさらに、もう一段上のレイヤーで演技をかぶせてるように見えた。つまり完成形をイメージしながら、最適演技を施すという。

シナリオが安易とか、デブリで破壊される一部の場面でCGが奇妙とか、SEの轟音が変だ、とか。突っ込みどころはある。出来はトンデモ映画と思う。だが、映像の凄さは実感できる映画だ。あと、無音を強調する音楽づかいもあざとくて良かった。とにかく宇宙の怖さが伝わる。とうぶん、宇宙に行きたくない。いや、予定はないけれど。

"チェイン・リアクション"がこの映画のキーワード。つい脳裏へ、ジャーニーが鳴り響いてしまう。
2013年12月28日 10時51分43秒
【4年ぶり】セットリストは変わるか?【ディラン来日】
2014年3月から約1か月滞在、日本各地のZEPPクラスで14公演を予定してる。
88年から続く"ネバー・エンディング・ツアー"の一環。ほんと続くなあ。

ディランのライブは見たことないが、毎日のように曲目が変わるのも楽しみの一つ。さて、最近はどうじゃろ。直近、11月末のロンドン公演3daysを見比べてみた。なんと。1曲だけアンコール違う以外、すべて同じ。

ならばその前、英ブラックプール公演との差はどうだ。これまた、アンコール1曲がたまに違うだけで、メインはセットリストが全く変わらず。
ではその前、今年7/28の米ニュージャージー公演と比べてみた。
ここまで遡るとさすがに、かなり曲順も曲そのものも違う。

いずれにせよ。ディランは前ほど頻繁に曲目を変えて無さそうだ。今回の来日公演、全部同じセットリストか否か。それを確認するには、やはり聴かないと分からない。

<直近のセットリスト>ここから引用。
音源は(ブートですが)ここで聴ける。

11/28/13 London, England - Royal Albert Hall

1. Things Have Changed (Bob center stage)
2. She Belongs To Me (Bob center stage with harp)
3. Beyond Here Lies Nothin' (Bob on grand piano, Donnie on electric mandolin)
4. What Good Am I? (Bob on grand piano, Tony on standup bass)
5. Duquesne Whistle (Bob on grand piano, Tony on standup bass)
6. Waiting For You (Bob on grand piano)
7. Pay In Blood (Bob center stage)
8. Tangled Up In Blue (Bob on grand piano)
9. Love Sick (Bob center stage with harp, Donnie on electric mandolin)
(Intermission)
10. High Water (For Charley Patton)
(Bob center stage with harp, Donnie on banjo, Tony on standup bass)
11. Simple Twist Of Fate (Bob on grand piano)
12. Early Roman Kings (Bob on grand piano)
13. Forgetful Heart (Bob center stage with harp, Donnie on violin, Tony on standup bass)
14. Spirit On The Water (Bob on grand piano, Tony on standup bass)
15. Scarlet Town (Bob on grand piano, Donnie on banjo, Tony on standup bass)
16. Soon After Midnight (Bob on grand piano)
17. Long And Wasted Years (Bob center stage)

(encore)
18. All Along The Watchtower (Bob on grand piano)
19. Blowin' In The Wind
(Bob on grand piano with harp then center stage with harp, Donnie on violin)
2013年12月23日 12時01分04秒
旋律転換法
グレッグ・オズビーと菊地雅章デュオ"Beyond All"(2005)を聴きながらオズビーの情報を検索。彼の演奏方法を指して「旋律転換法」って表現があった。メロディを回避しつつフリーでない音選びを指すらしい。

いくつかのジャズ系・ブログでこの表現を見るも、オリジナル(というかアカデミックな分析を施した)ページを見つけられず。ファン間の造語かな?
もし誰かブロガーの造語ならば。一般的に広がる定義始祖を作ったってことで、さぞかし誇らしいかろう。

ちなみに旋律転換法のニュアンスはなんとなくわかる。耳馴染み良いメロディへ行かず、妙に無機質。かといってフリーな力任せと違う。抽象的に行き来する、内省的とも無秩序とも取れるフレーズ作りは、不安をあおる。そんな、アドリブ。十二音技法みたいなロジカルさとも異なり、聴いててカタルシスが溜まる。

快楽原則を丁寧に外したデレク・ベイリーの独特のフレーズ作りに似てるが、少なくともオズビーの演奏は聴いてる精神状態で、驚くほど印象が変わる。

ぼおっと聴いてたら少々苦痛だ。BGMに向かず、やんわり耳にも届かない。空虚にフレーズが空気へ散っていく。集中して聴いても、ノレないとソロの焦点や展開をイメージしづらく、やはり辛い。特に本盤は縦の小節線もあいまいなため、なおさら。

だが、ピントを上手く併せられると浮遊感がたまらない。とっても聴く心象を選ぶサウンドだ。
2013年12月23日 08時53分28秒
おならBOOのBoost Compi
simi-labの検索してるなかで行きついた。おならBOOがtwitterで呼びかけたラッパーやトラックメイカーを集めた、無料ダウンロードのラップ・コンピが"Boost Compi"。
年末に第三弾が発表され、そこへ simi-labのメンバーが参加してるようだ。

ここで過去2作もDL可能。今聴いてるが、実に日本らしいラップのコンピに仕上がりだ。
http://boostcompi.web.fc2.com/top.html
かなりクセのあるラップだが、予想以上に面白い良品で、出来は丁寧。何となく学生がノリで作った風に見えるが、金をとれる仕上がり。
両方のコンピとも、参加者は全員知らない。アマチュアなのかプロも交じってるかも。

上で単純に"実に日本らしいラップ"と書いたが。具体的にはニコラップとクラブ風味がコミケ感覚でギャングスタ的要素と、滑らかに融合したセンシティブなラップ。ってこと。

もう少し細かく書いてみる。まず前起きで韻について。
音楽に限らず文化は拡散の過程で土着化変貌は当たり前だ。音楽の中でも特にラップはスキルが言語と密着なせいか、地方化が実に甚だしく興味深い。You tubeで各国のラップ見てると、しみじみ思う。

日本語ラップの特徴を韻の観点と文化の観点で書いてみる。
まず韻は頭/脚韻の双方で踏めることに加え、「英語と日本語」の混合の韻が存在する。例えばそうだな・・・「Kingの奇遇な最近の防具でBowing」とか。
アメリカ・ラップの歌詞をきちんと見てるわけじゃないが、英語と多言語を同時に韻を踏むってスタイルは、どこまで一般的だろうか。

で、次に"ニコラップ"。
原器をアメリカのラップとしよう。キーワードは不良性と個人アピール。"クールな俺"をいかに表現するか、が鍵になっている。グループでも、そこで存在感を個々人は表現を忘れない。
ベック"Loser"みたいなベクトルも、基本はねじれたユーモア。匿名性は「カッコいいあだな」が軸になっている気がする。

翻って日本。もちろんギャングスタ・ラップもある一方で、ニコニコ動画でハンドル使い徹底的に匿名性を保ったうえで、「へなちょこクール」を表現する独特の文化が成立した。ここでは知識とスキルは高める一方で匿名性を崩そうとしない。したがって粋がった自己アピールはどんどん控え、ぬるま湯風のほわんと寛いだムードが演出される。

逆にアメリカに同様のラップあるならば、ぜひ教えて欲しい・・・。Youtubeでそうとうあちこち検索したが、どうも見つからない。聴いてみたいのに。物理的に広大な土地で、自らの殻にこもった人はどんな音楽を作るのか、興味ある。シカゴ・ハウスみたいにテクノでは「自己にこもった音楽」ってあるけれど。

話しがズレた。次に、クラブ風味。これは単純にトラックメイカーが前面に出たラップ。アメリカには東海岸を中心にディギン基本のラップあるが、日本ではネタと並行してテクノ寄りのトラックが多い気がしてならない。安いリズム・ボックスを使い倒す、がアメリカだとすれば。日本はその完成形をどっぷり聴いたうえで、DTP感覚で環境で作りこむのがなじみ深いせいか。

次に"コミケ感覚"。もちろんアメリカでコンピやプロデューサー乱立は当たり前だ。しかしあちらでは地域のコミュニティが前提で、プロデューサーも「奴の才能/人脈/名声を取り込みたい」って、上昇志向が透けて見える。
一方の日本は、とっても無邪気。かつ、ネットの匿名性で気軽に交流が進む。その上「同人誌」という複数のメンバーが一つの作品を作り上げる、に親和性ある文化がニコニコ動画へ滑らかに流入した。
その上でDTPとネット環境で交流やデータ連動もたやすい。

するとまさに本コンピのように「最初は見知らぬ同士がtwitterをきっかけに」「トラックメイカーとラッパーが同席する録音環境は不要で」「多様な価値観/音楽スタイルが同居しても良い、の判断で」作られた作品が、出来上がる。

本コンピを聴いてると、ごった煮のように多彩な音楽要素が詰まってて、ラップ・スキル/トラック的にとても興味深い。
あとはラップの声そのものに、もっと存在感があると文句ない。どす声でまくしたてるってマッチョなラップは、ニコラップ的なスタイルだとどうしても希薄になる。

海外でもこういうコミュニティ的なラップはあるだろうから、聴いてみたい。言葉が分からないと、どうしてもネットの海を攻めにくい。
2013年12月22日 08時55分14秒
達郎とジャズ
達郎のファンクラブ会報が届いた。今回は"クリスマス・イブ"について色々語ってる。JR東海のCMで超有名になったが、1992年のCMでは達郎も出演とは知らなかった。
Youtubeで当時のCMを見ることできるが、最初5秒目くらいで主人公の女の子にぶつかるギター持った男が達郎。

最後のコラムはジャズについて達郎のインタビュー。アイラーにハマったんだと。知らなかった。
達郎の人生BEST JAZZ 3枚はアイラー"My name is Albert Ayler"、レスター・ボウイ"Numbers 1&2"、山下洋輔トリオ"Up-To-date"。やばい、3枚とも聞いたことない。
ちなみに山下トリオのこのライブ盤、収録現場に達郎も客でいたという。

あと。SSBコーナーでは今年夏の納涼夫婦放談のテープ起こし有り。
"結婚したとき、まりやが持ってきたレコードはどうなったか"って話題の会話に笑った。
まりや「ないよね、別個にレコード棚は・・・」
達郎 「いえ、あります」
まりや「結婚で持ってきたとき『どうせ僕らは離婚しないから一緒にするよ』って、いっしょくたにされた・・・」
達郎 「LPは一緒にしました。シングルは"Mariya's"って仕切りあって、20センチくらいの幅がレコード棚に別個にあります」
まりや「なんか私のレコードを奪っていくような、そんな感じが(笑)」
達郎 「ウエストコースト系をあんまり持ってなかったから、これはいいやって。シングルはね、かぶってるのがすごく多いから」
まりや「どうせ、レコードのほうが、大事だよね(笑)」

達郎にとっては、一万枚超えたシングル棚の中で、わずか20センチ幅のシングル棚だけでも『別個に棚はある』って感覚なんだろな。
気持ちはよくわかる。・・・もちろん、達郎の方の気持ちが。
2013年12月19日 21時52分20秒
HDDを更新
 数年前に買った1TBはデータが増えて、かなり窮屈になり新しいのを買おうか、ここ一年位迷ってた。先日、ようやく購入。こんどは3TB。空き容量がいっぱいあると、なんとなく心が大きくなる。不思議だ。

 バッファローのHDDを買おうと思ってたが、店に行くと見慣れぬメーカー、WDのHDDも山積み。
店員によると「WDはHDDの製造メーカー、バッファローはHDDを外買い。HDDの信頼性ならWDをお薦め」。迷ったが、HDDを買った。しかし店の手違いで、2TBと3TBが同じ値段で陳列されており、危うく間違えて3TBの値段で2TBを買うとこだった。

 しかし最近のHDDってアルミのヒートシンクが側面についておらず、放熱ファンのみ。こんなんで熱暴走しないのか。今は冬だからいいが、夏は大丈夫かな・・・。
 プロパティ見ると3TBきっちりある。だがなぜか右横の容量表示は「2.72TB」。280ギガ損した気分だぞ。

 i-tunesのデータも移行完了。データ移行処理に失敗して、過去履歴はきれいに吹っ飛んだ。再生回数はまた一からやり直し。今はFoobar2000を中心に聴いており、たぶんi-tunesに聴いた曲回数は今後、記録されないだろう。
 曲データもすべて、i-tunesへ新たに読み込みこんだ形が少々残念。だいたい何月ごろに読み込んだか、ってデータも漠然と検索に利用してたから。しかしi-tunesへのデータ移行は今まで何回もやって9割方失敗、過去の再生回数がそのたびパアになっている。うまくいかないなあ。

今のBGM:Repeat"Temporary Contemporary"(1999)
 中村としまる(no imput mixing board)とジェイソン・カーン(ds,metals, sampling)のユニット、Repeatの2nd。98年に東京で録音された。
 さえずるような中村の電子音が沸き立ち、カーンのパーカッションが静かにかぶさる。
 小さな音で聴いてると酩酊気分の虫の音を聴いてるようだ。ああ、心地よい。耳を澄ますと高周波や低音も聴こえる気がするけれど。CD化の時点で物理的にある程度の周波数はカットされている。さらに僕はPCで聴いてるから、リッピングの時点でデータは圧縮されている。それでも、この周波数帯域は気持ちいい。
 音質重視ならばライブでしか体験できないと思うが。こないだ中村のライブを聴いて、しみじみ実感した。あの低音と高音周波数は、まさに"体感"だわ。
2013年12月17日 23時14分35秒
フュージョンとAORとディギンと。
日記に「風邪ひいた」と書くの控えて幾星霜。すると一切、日記書くネタが無くなった。今回の風邪は根が深く、寝込んだ後も一週間くらい引きずっている。ああ、熱がだるさが咳がゲホゴホガホ。

今、ぱらぱらと読んでるのが「フュージョン:740Discs」と「AOR:名盤プロデューサーの仕事」。両方ともさっぱり聴いてこなかったため、ほとんど知らない盤ばかり。なぜいまさら王道路線に進んだか。やはり、歳をとったということ。
若い頃はメジャー・ヒットに背を向けマイナー掘り起しこそが価値有り、とひねくれた路線を進んでた。だがもう、良いだろ。聴きたいものを聴く。
しかし読んでて興味引くのは「隠れた名盤」の記述ばっかり。どんだけひねくれてるんだ、おれは。

さらに今はYoutubeで試聴が比較的容易がありがたい。昔は外れ盤の率を少しでも下げようと、ガイド本や雑誌のレビューで買う盤の厳選してた。今はとりあえず聴いて、が凄くやりやすい。良いことかは、よくわからない。盤への思い入れが、どんすか希薄化する気がする。

聴きたい盤が増えていき、聴く時間は限られる。すると「売れてる盤はいつでも手に入る。マイナーなのを探そう」と発想してしまう。向かうはレコード屋のバーゲン・コーナー。一枚数百円のCDをジャケ買い。値段が手ごろだと冒険しやすくなり、つい色々と買っては聴く。
そしたらやはり、聴くのはマイナー嗜好へ。変わったんだか、変わってないんだか。

今のBGM:Mr. J. Medeiros"Of gods and girls"(2007)
 ヒットしたかは知らない。LAのヒップホップ・チーム、ProcussionsのMCがリリースした1stソロがこれ。予備知識なしのジャケ買いだ。
 ここで無料DLできるみたい。http://mrjmedeiros.bandcamp.com/album/of-gods-and-girls

 予想以上に気持ちいい。いわゆる心地よいヒップホップ・ブレイクビーツだが、サンプリング・ネタのひけらかしや羅列/積層に終わらず、トラックのコンセプトをきっちり組み立てた。
 シンプルなリズムへたんまりとエコーをかぶせて、幻想的な空気を漂わす。酩酊気分を演出かも。心地よいチルを誘う曲は心地よいが、ときおり顔をのぞかす不協和音っぽい不安定な空気にも惹かれた。たとえば(13)みたいな曲。
 フロアで踊れるテンポかもしれないが、押しつけがましさはない。

 同じリズム・パターンの繰り返しでミニマルな茫洋を演出し、歯切れ良いラップで空気を刻む。やっぱ、こういうヒップホップは気持ちいい。
2013年12月14日 12時16分18秒
インド風ジャズ。
"何とか風"ジャズ、を大づかみに定義すると「アメリカのジャズを咀嚼した」ジャズと言えないか。
Rudresh Mahanthappa"Kinsmen"(2008)を聴いて、しみじみ思う。まさにそんな一枚。というかこれ、素晴らしい作品だった。これだからジャケ買いはやめられない。

本盤のリーダーRudreshはNY拠点のインド系アルト・サックス奏者で、本作は7thリーダー作にあたるようだ。詳しい経歴はこちら

"Kinsmen"はゲストにインドのカルナータカ音楽と呼ばれる南インド古典音楽でアルト・サックスのベテラン奏者Kadri Gopalnathを招き、バンド編成で吹き込んだ一枚。
バンドはThe Dakshina Ensenbleと呼ばれ、ベースのCarlo De Rosa以外はインド系ミュージシャンっぽい。編成もひねりを加え、ds/b/gにvlnとインドの両面太鼓ムリダンガムを編成に加えた。ここにRudreshとKadriのアルト2本が加わる。

単なる変則エキゾティック・ジャズなら、ここまでぼくは喜ばない。聴いてるジャズは逆にインド系に流れず、がっぷりモダン・ジャズのスタイルを取り入れた。それでいて、スイングやグルーヴは、アメリカンなノリを欠片も見せない。思い切り、インド寄り。

オリジナルを尊重しつつ模倣に終わらず、飛び出しつつも手前勝手に終わらない。
音楽をきっちり、華麗に奏でる。そんな素敵なジャズが詰まった一枚だ。
本盤名義のアルバムはこれだけみたいだが、ライブはその後も幾度かやってたらしい。生で聴いてみたいな。
熱っぽくアドリブが展開する中に、いわゆるジャズのノリは欠片もない。だが、瞬間がつながって流れになると、まさにジャズ。インド風とは全くかけ離れてるが、フレーズを初めとして"異文化"の刺激的な勢いが、ふんだんに詰まった。
強固な蓄積ゆえに自由な展開も、鷹揚に取り入れる。そんなしたたかさを感じさせる傑作。
http://www.youtube.com/watch?v=YVPnDXp_RwU
2013年12月07日 17時48分36秒
音楽本:未読の新刊紹介
出張から帰ってネットをチェックしたら、マイナー・ジャズ(日本人を含む)ライブ音源(無断の)ブログ"clarence duclo tapes 'n shit"が、全ファイル潰れてた。

ファイル・サイトの判断みたいだが、復活はあるかなあ。ここんとこドンスカと同様サイトが潰れてる。ノイズ系で興味深かった"Hypocrite God 4"も潰れて半年以上たつ。Hypocriteは過去2回は、ブログ変えて復活したけど、今回はどうかな・・・。

今のところ民族音楽系はまだいくつか現役。嬉しいことに3年間沈黙を保ったブログ"Brain Goreng"もこないだ復活してた。著作権つっこみが一番ゆるそうな、民族音楽系の音源ブログは息が長くなるのかも。

余談が長くなった。年末に向けて音楽本で興味深いのが何冊も出てる。
まだ読まないうちに、広告宣伝などを元に無責任に紹介して見る、が今日の日記の企画意図。

「チャーリー・パーカーの技法 インプロヴィゼーションの構造分析」濱瀬元彦:著(岩波書店:2013)

来週くらいに出版らしい。特別に、楽しみな本。著者のことは菊地成孔の東大アイラー本で知った。いつかは書籍化、を楽しみだったパーカーのアナリーゼだと思う。
某電子書籍サイトでは320頁の告知が、Amazonや岩波書店のサイトでは248頁。72頁違いって4折りくらい?ところが値段は変わらず、5,775円。高いうえに薄くなるのは残念だが
内容は興味深い。とはいえぼく、コード進行や理論はさっぱりだが。

「ベートーヴェンピアノ・ソナタ全作品解説 (叢書ビブリオムジカ)」横原千史:著(アルテスパブリッシング:2013)

12/4発売。研究者向けかもしらんが、出版社がアルテスなら素人でも読めるかな、と。
アナライズは自分の知識が全く及ばぬ分野だけに、非常に読んでみたい。理解できるかは別にしても読むことで、違う観点の効き方ができるような気がする。

本書はピアノ・ソナタ全作品を譜例を多数使った解説らしい。音楽学者9人のエッセイもあるという。本屋で並びにくそうな本だし、ネット買いかな。

「EATER 2014」地引雄一:編(K&B パブリッシャーズ)

これも嬉しい本。七尾旅人、大友良英、遠藤ミチロウといった震災後に別の視点で名前を見る人が多い。他のインタビュアー掲載も勝井祐二やJOJO広重と、プロジェクトFUKUSHIMA参加者が多い。
この観点でのインタビューばかりじゃないといいな。純粋に音楽の話をしてくれてたら。

だがとにかく、01年で休刊だったこの手の音楽業界を中心に発表してた雑誌、EATERの復活は素直に嬉しい。ぼくがこの業界に興味持った頃に、色々と貴重な情報を教えてもらった。他に業界ミュージシャンのインタビュー読む方法って無かったし。

「i-tunesではじめる クラシック音楽の愉しみ」レコード芸術:編(音楽之友社:2013)
今の若者はCDメディアを買うってことが逆に違和感あるんじゃなかろうか。最も保守的なはずのクラシック業界も、若い聞き手は同じ発想だと思い込んでいた。だから逆に、本書みたいな切り口が面白いかな、と。

本書はレコ芸連載に加筆を加えたムック本。ってことは、年配読者向けか。
なにせ最初のスローガンが「まずは恐れず(ネットに)アクセスすべし」。いまどき、若い連中がネットのDLにためらうとは思えん。

あと本書は「手に入れそこねた名盤」をどうやって手に入れるかって目次も気になった。
どんな紹介をしてるやら。これから、読む。

「AOR名盤プロデューサーの仕事」中田利樹:著(シンコーミュージック・エンターテイメント:2013

黒人音楽の分野でお世話になったレコード屋、芽瑠璃堂が企画/編集本のようだ。なのになぜ、白人AOR・・?ってのが興味深いとこ。単行本でなくムック式の本だった。
記事中心と思ったら、レコ評本っぽい。さて、どんな内容かな。
もともとはAOR分野のプロデュース業や、スタジオ・ミュージシャンとのやりとりを読めたらいいな、と期待だが。
2013年12月06日 22時56分03秒
カバン移し替え
明日は荷物が多いため、いつもの仕事カバンから別のバッグへ中身を移し替えた。
そもそも「あれが無い、これが無い、ああ、かばんに入らない」が嫌なため、かなり大容量のカバンを普段使いにしてる。
「邪魔くさい」とか「大げさだ」とか言われようとも、頑として変えてない。
一通り中身は移動させたが、忘れ物が無いか不安だ。

この一世代前に使ってたバッグは良かった。カバンの懐が深く、筆記用具もPCも着替えも、移動中に読む本とかi-podとか、も全部突っ込めた。それでいて、横幅は20センチかそこら。あれは便利だった。

10年以上使ってブチ壊れたため、新しいカバン買ったのが7〜8年前か。同じタイプ無いかしつこく探したが、とうとう見つからずじまい。
今のバッグは大きさは申し分ないが、今一つ収納が窮屈。具体的には、着替えが入らない。
今のバッグもあと数年で買い換え。その時、理想のカバンがあるといいな。いま、ちらっとAmazonみたがどうも気に入るものが無い。
カバンだけは通販で買えない。またどっかで、安売りしてないものか。

今のBGM:The Ethan Iverson Trio"The Minor Passions"(1999)
 まさにBGM。こないだ買った。イーサン・アイヴァーソン(p)がバッド・プラス結成前に吹き込んだ、ピアノ・トリオのライブ盤。
 ビリー・ハート(ds)と、同じくバッド・プラスに加わるリード・アンダーソン(b)が脇を固めた。全8曲中3曲がスタンダードで、あとはイーサンのオリジナルを演奏してる。
 恐ろしくオーソドックス。だが繊細にして微妙に前衛的。なんだかバランスとってるアルバムだ。不穏ながら耳馴染み良く、滑らかなふりしてどこか引っかかる。
2013年12月03日 21時40分28秒
ファンド届かず・・・。
日本の即興音楽をイギリスで開催するイベント「MultipleTap」がファンディング・サイトのindiegogoで出資を募ってた。今回、2回目の締めきり来たが、目標の1万ドルに対し2500ドルの集金に留まった。残念・・・。

このファンドの目玉は、特製の限定ライブCD。ファンド出資者のみの限定、とある。出資額は30ドル。まあ、1〜2枚組くらいかとタカをくくったら10枚組らしい・・・ほんとかよ。
Every act of this festival will be recorded, and included in to this CD.
(We Plan 10 CDs box set)
Original artwork box (Included Booklet, Photo and more).
and We put something different materials in each box.

来月頭に第3回の募集かけるらしいので、興味ある方は是非どうぞ。CD発送は来年5月だそう。

ちなみに今週11/30(土)に、原宿のGalaxy 銀河系でプレミア・イベントあり。気になる出演者は、
非常階段(JOJO広重、JUNKO、T.美川 )
ドラびでお
田中悠美子
中村としまる
秋山徹次
伊東篤宏
石川高
若林美保
PAINJERK
大城真
川口貴大
毛利桂
康勝栄

これに加え、イギリスでは初音階段と河端一(AMT)も加わる。凄い面子だなあ。
正統派ノイズと音響系ノイズ、双方からの人選だ。

Multiple Tapのweb:http://multipletap.com/
Fundのweb(終了):http://www.indiegogo.com/projects/noise-experimental-improvised-music-festival-2nd-campaign--2
プレミアイベントの紹介Web:https://www.facebook.com/events/1398751137021239/
2013年11月28日 23時04分45秒
途中で切れた。続き。
6)XXL feat. MARIA, ICI

 譜割は菊地が言う"フロウ"全開。「タータタ、タータタ」ってパターンを多用しつつ、「ンタータ、タッタ」ってパターンや、裏や奇数連符の挿入がビートと絡む。リズム感のふらつき、ぐらぐら揺らぎを積極的に表現した。

 フックのメロディは、これもスパンクスを連想。スパンクスではポエトリー・リーディングが数曲あったが、舌足らずを"わざと"作るICIの破裂音がキュートだ。途中の囁き声からノーエコー風、ボカロ風に変わるアイディアを次々投入して、飽きさせない。
 そっと大谷が低音でなぞりアクセントをつけた。

7)HERE & THERE
 このあたりから、本盤は発声芸能のさまざまなパターンを投入していく。
 詩はヘンリー・ミラー"黒い春"の朗読。散文を淡々と読む。
 大谷が低い声で渋く、クロスオーバー・イレブンめいた世界を表現した。トラックはシンプルなリズムだが、断続するフレーズが暗く彩りをつけた。

 一人多重の場面は無し。リップ・ノイズすら聞こえそうなオンマイクで生々しさを出した。ここまでのつくりこまれたプラスティック感と、つまりアルバム構成全体で、異なる価値観を投入となる。
 
8)夜戦と恋愛 feat. AI ICHIKAWA, DyyPRIDE, OMSB
 フックは明確なメロディ。J-POP的なアプローチだが、内容はズブズブの"フロウ"が満載だ。しかし"戦争"と"Saint-souse"、"仙草"のトリプル・ミーニングと、歌詞カード見て初めて知った。

 呟く菊地のラップはリズム感をワザと押さえ、粘っこい。ビートの裏と表にべたっと当てて、重たいグルーヴを表現する。

 DryPRIDEはプチプチ弾けるラップで対照的。ある意味Simi-Lab勢がオーソドックス役、アンチテーゼや奇妙な価値観を、ドミュニスターズ勢で担った気がしてならない。
 大谷パートの最後で、軽く放り投げるような残し方もイカしてる。

9)互いの街 feat. MOE
 抽象的、菊地の1st"デギュスタシオン"で多用した、別録音セッション・ジャズっぽい。音像はペペ風だが。明確な打ち込みビートと、無造作で散発な響きが薄ら怖い。
 
 ラップは大谷の魅力である、低音強調の朗読。多重は無い。ハードボイルド風の散文詩をポエトリー・リーディング風に読むが、(7)と異なり内省的な芝居っけをちらつかせた。
 菊地へつながると、途端にダブル・トラックを連発。あえて微妙に音程をずらして、不安定さを強調した。妙に和音感ある。

 MOEのラップはDCPRGのりおん風ボカロ・ラップ。だが一発取り風に流れて、ブレス・ノイズもきっちり聞こえる。つまり人工合成を人力生で表現する奇妙さ、だ。

10)薔薇の震撼 feat. MOE
 トラックは打ち込みビートだが、なぜか生演奏の色を感じた。キックやハイハットの譜割が不連続に鳴るせいか。
 ごく短く、"薔薇である"って言葉の繰り返しで、ラップのミニマル感を出した。
 
11)AGITATION feat. MOE, DyyPRIDE
 ここでトラックが生演奏のクラシカルなミニマルに変わる。曲は8分弱の長尺。
 ラップは長尺、不条理な小劇場っぽいムードを選んだ。意味がありそうで無く、言葉の流れと単語の重ねで意味を伺わせる。
 
 多重トラックを強調してきたDryPRIDEがあえてシングル・トラックで起用し、孤独や寂しさを表現。有頂天がこういう世界観、得意なんだよな。

12)NEW DAY feat. OMSB
 カーテンコール、いやスタッフロール的なムードの曲。ぺたっとシンセが鳴る前で、順番にラップを重ねてく。菊地の譜割はここでも、ビートの頭をくるくると前後して、舞った。ソプラノ・サックスが高らかに鳴りつつ、フェイド・アウト。
 
 個々の曲でも譜割はもっと細かく、気を引く場面がいっぱい。ダンサブルさを残しつつ、さまざまな分析や解釈を誘発する構造が、いかにも彼ららしい作品だ。単なるハッピーなアルバムに留めない。
2013年11月14日 21時43分50秒
リズムとハーモニーの快楽
Jazz Dommunistersの1st"BIRTH OF DOMMUNIST(ドミュニストの誕生)"(2013)が面白い。
菊地成孔と大谷能生のヒップホップ・ユニットで、自主制作にて発表された。
今のところAmazonなどで販売無し、BEA-TONEなどで売られてるのみ。

そもそもラップの愉しみとは何か。
1)詩の面白さ、韻踏みでの知的スリル、自己顕示
2)アクセントや譜割でのスピード感/ダンサブルさ
3)トラックでのサンプリングっぷり(選択/グルーヴ、双方で)

仮にこの3つを定義としよう。だがぼくは英語が分からず、1)はさっぱり楽しめない。2)はあんまり、意識しなかった。数年前までは3)の観点でのみ、ヒップホップを聴いていた。
だがたまたま日本語ラップを聴いたとき、新しい魅力に気が付いた。

4)多重録音ラップのニュアンス付与、ストーリー性の構築
5)日本語アクセントのズラシの妙味、英語とのダブル・ミーニング

もちろん、1)の詩が分かるってのも日本語の強み。なお4)の多重録音を効果的に使ってるアメリカ人ラッパーは、ぼくの不勉強で知らない(ぜひ知りたい。聴いてみたい)。
で、Jazz Dommunisters。菊地のラップ嗜好は、彼の言う"フロウ"タイプと思ってた。だが本盤では、さらに拡大し多様な発声スタイルを突っ込んだ。ラップ、朗読、ポエトリー・リーディング、などなど。
トラック個々の新規性よりも、このバラエティに富んだ構成こそがJazz Dommunistersの個性であり強みであると思う。
改めて日本語ラップの面白さを実感した傑作。

Jazz Dommunistersは大谷の低音効いた綺麗な声と、軽い菊地の声質の対比がいいコンビだ。

以下、個々で簡単にポイントを述べてみる。

1)INTRODUCTION feat. ICI
 夜電波でやってた名前の英訳ギャグ。生っぽさを生かしつつ、唐突にカットアウトし次の曲へ行く構成がカッコいい。大谷 "O Tiny your shit Oh!"って初めて聞いた。
 トラックはスイング・ジャズ。録り下ろし・・・かな?

2)DRIVE feat. OMSB, AI ICHIKAWA 
 ある意味夜電波やDCPRGなどで聴きなれた、菊地流"フロウ"を中心のラップ。トラックはDCPRGの"構造1"を連想した。
 けたたましく、せわしなく、日本語をネジくりたおす。"原子炉搭載"って加工した声の和音感がカッコいい。そう、本盤は和音感あるラップがそこかしこで聴ける。

3)BIRTH OF DOMMUNIST
 多重録音ボーカルのラップ。同じラインをなぞるダブル・トラックは、ラップの即興性を否定しつつ、スピードを強調する。「カダフィまだau(英雄)、おれSoft Bank」の、日本語と英語のダブル・ミーニングとシャレはネイティブゆえに楽しめる詩だと思う。
 フックでの菊地と大谷の同時進行ラップは途中で、軽やかに和音を生かしたラインに変わる。
 "ネタ"、"ベタ"などの二文字と、"とか"を重ねるスピード感ある効果も良い。

4)SHOW TIME JOE
 互いの長尺ラップを生かした曲。最初の大谷は低音の渋みと、キザな中域を前後する音域を使った。多重録音を避け、生っぽさを見せる。途中の3連符も効果的。
 菊地も多重録音無し。時折、大谷がラップをハモらせアクセントをつける。菊地のほうが譜割やアクセントを頻繁に変え、つんのめる違和感と、言葉を畳み込むスピードを自在に操った。

 フックのアイディアが秀逸。二人が同じ言葉を重ねつつ、譜割がずれてポリリズミックに響いた。
 バックのCD-Jはペペの"アリア 私が土の下に横たわる時"かな。スクラッチとショート・リピートされるCD-Jが生々しく、逆説的にメカニカルな二人のラップを強調した。

5)FOOD feat. MOE, MARIA, OMSB, AI ICHIKAWA

 本盤で最もポップな曲。トラックはテクノ風が強調され、スパンクスを連想する。ループ&サンプリング的なAI Ichikawaのフックをアクセントに、各ラップがつながる。このソロ回しがジャズ的だ。そう、本盤はラップのマイクリレーよりも、ソロ回しっぽい。

 Mariaがある意味オーソドックスにラップを決めた。だがダブル&トリプルのラップを場面ごとにめまぐるしく重ねてスピードをつける。
 OSMBはリズミカルなラップを重ねて、トラックからビートが消える。つまりラップでテンポ感を出し、トラックのリズムを出し入れし、多層的なビート強調をした。
 大谷のラップもグルーヴィだ。唐突に一節歌ってリズム感を消し、そこからポップに雪崩れる。もう一行進むと、言葉のアクセントを拍の頭から裏からべたべた当てて揺らぎっぷりがいい。
 
 菊地のラップが素晴らしい。ものすごい小気味よい畳み掛けつつ、譜割は奇数連符と中抜け16分音符がコロコロ転がる。
 最後の最後。"喰うのよ"の、"のよ"だけが妙に生々しく響くカッコよさったらない。

 最後に頭1拍めで強引にトラックが切られ、前のめりに倒れる切迫感も良い。
2013年11月14日 21時43分07秒
SFメガパック
Amazon検索して異様に安いSFアンソロジーを見つけた。
"The First Science Fiction Megapackk"
キンドル版で97円。内容見たら短編集のようだ。第一巻だけ、収録内容を後述する。

ざっと調べた限り、50〜60年代を中心に25本の短編を収録。うち3本が80〜90年代の比較的新しめの物みたい。パルプ雑誌終焉前後の時代に着目かな。
邦訳は2編のみ、かな?出版年や邦訳有無を調べるのに使わせて頂いたDBはこちらの二つ。

The Internet Speculative Fiction Database(http://www.isfdb.org/)英語
翻訳作品集成(http://homepage1.nifty.com/ta/)日本語 

前者は何でも出てくる。すさまじいデータ量だな。
後者は個人の労作。二段階の検索が難点ながら、非常に緻密な作業に感服した。

さて、このキンドル版アンソロジーは他のシリーズもあり。エドモンド・ハミルトン集とか、いいなあ。
日本でも似たような企画が無いものか。青空文庫だとエンタメ系は少ないからさ。

<第一巻:収録作>
UNKNOWN THINGS, by Reginald Bretnor(1989)
CAPTIVES OF THE FLAME, by Samuel R. Delany(1963)
EXPEDITER, by Mack Reynolds(1963)
ONE-SHOT, by James Blish(1955)
SHIPWRECK IN THE SKY, by Eando Binder(1954)
ZEN, by Jerome Bixby(1952)
LANCELOT BIGGS COOKS A PIRATE, by Nelson Bond(1940)
SENTIMENT, INC., by Poul Anderson(1953)
THE ISSAHAR ARTIFACTS, by J. F. Bone(1960)
THE NEXT LOGICAL STEP, by Ben Bova(1962)
YEAR OF THE BIG THAW, by Marion Zimmer Bradley(1954)
EARTHMEN BEARING GIFTS, by Fredric Brown(1960)「最初の接触」
HAPPY ENDING, by Fredric Brown and Mack Reynolds(1957)
LIGHTER THAN YOU THINK, by Nelson Bond(1957)
RIYA'S FOUNDLING, by Algis Budrys(1957)
ACCIDENTAL DEATH, by Peter Baily(1959)
AND ALL THE EARTH A GRAVE, by C. C. MacApp(1963)
DEAD RINGER, by Lester del Rey(1956)
THE CRYSTAL CRYPT, by Philip K. Dick(1954)「火星潜入」
THE JUPITER WEAPON, by Charles L. Fontenay(1959)
THE MAN WHO HATED MARS, by Randall Garrett(1956)
NAVY DAY, by Harry Harrison(1954)
THE JUDAS VALLEY, by Robert Silverberg & Randall Garrett(1956)
NATIVE SON, by T. D. Hamm(1953)
JUBILEE, by Richard A. Lupoff(1996)
FINAL CALL, by John Gregory Betancourt(1995)
2013年11月10日 12時50分35秒
3Dプリンタ製の銃が50発の射撃に成功
こないだ企業展示会で3Dプリンタの実演を見た。面白いね。作成時間はそれなりにかかるみたいだが、何にもないとこからチャカチャカと機械動いて物ができていく。
しばらく前から、ビジネス書でも3Dプリンタの可能性がいくつか有り。と思ったら、すごいニュースがネットにあった。

『最初に知られるようになった3Dプリントによる銃は、射撃の信頼性が低いせいで話題に上らなくなったが、このほど同じく3Dプリントによる銃が新たに製作された。射撃にも問題はない。実際、この拳銃は動作不良を起こすことなく数十発を発射できるらしい。』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131109-35039666-cnetj-sci

米Solid Concepts社が発表した。主業務は"3Dプリントサービス"。怖い世の中だ。要するに銃メーカーでなくとも銃が製造できるということ。これが"合法"ってのが分からない。とはいえ日本でもこの機械買って、ソフトと材料さえあれば銃が作れるってことだよな。
費用的には密輸のほうが安そうだから、あんまり犯罪に使われるってのは気にしなくていいかもしれないが。

Youtubeでの発射試験では、さすがに1発目は遠隔で紐使って射撃してる。
しかしそのあとは普通に人間がトリガー弾いてる。こええ。暴発とか気にしないのかね。50発以上撃って銃が破壊したとき、人が撃ってなかったことを祈る。
公式プレスリリースはこちら

今のBGM:The New Quartet"Blue Rhizome"(2007)
 シカゴで録音のジャズ。ギター/ベース奏者のKarl E.H.Seigfriedが音頭を取った4人編成だ。サイドメンはGreg Ward(fl,sax),Carmel Raz(vln),Chris Avgerin(ds,per)。この界隈は詳しく無く、彼らのキャリアは分からない。本盤はジャケ買いした。

 予想以上に楽しい。組曲形式だがストレートなアコースティック・ジャズから、エレキギターがバリバリの楽曲まで幅広いアレンジを取り入れた。演奏はタイトで、特にクラシカルなバイオリンの響く場面が美しい。ジャンルにとらわれず聴く人にこそ、勧めたい盤だ。(http://www.cdbaby.com/cd/newquartet)

 裏ジャケに詳細なライナーがあり、作曲は"a Crisis of faith"に触発された、とある。
訳は"信仰の危機"で良いの?Wikiに記事はあるが、日本語版が無い・・・。
http://en.wikipedia.org/wiki/Crisis_of_faith
2013年11月09日 20時12分40秒
「ゴースト・ミュージシャン」
知識の蓄積と批判精神が両立せねば、いくらマニアックでも評論は意味がない。著者が言いたかったのは、そういうことか。

「ゴースト・ミュージシャン」鈴木啓志:著(DU Books:2013)を読む。
60年代後半に一世風靡なアラバマ州マスル・ショールズのスタジオ、その名もフェイム。本書はこのスタジオを軸に、著者の分析を述べた労作。
知識がある程度ないと記述は全く意味不明だろう。ぼくはサザン・ソウルはあまり得意でなく、読んでて頭に入らぬ場面も多い。カタカナが続く場面は正直、読みづらい。横組みで曲名のみ英語表記なら、幾分は読みやすくなるだろうか。ここで人名まで横文字にすると、逆にうるさくて読めなくなるが。

著者はソウルの博覧強記な方。いまさら初心者へ啓蒙まで手が回らないのか、以前の著書"SOUL CITY U.S.A.―無冠のソウル・スター列伝"(2000/リトルモア)は、すさまじく詳しいがチンプンカンプンだった。面白そうだが、自分の知識不足を痛感したっけ。

ところが本書は非常に読みやすい。大部でもスラスラとページが進む。著者の実体験や思い入れを敢えて強調し、エッセイとして取っ掛かりやすいためだ。音楽評論はデータ一辺倒だと、どうもダメ。著者の自我全面もつらいが、絶妙にバランスとれてると親しみがわく。

本書の主論はイギリスなどで定説な「フェイム・サウンドは白人と黒人の協力のもとに作った」はが、幻想だと切って捨てる。
そもそもこの説を知らぬ人は(ぼくは知らんかった)、そもそもの前提条件と著者の主張を整理しながら読まないと分かりづらい。
よって本書は「終章」を先に読むのがおすすめ。ここに著者の意見が明確化されているため。

有名どころ(とぼくが思う)人名で、著者の主張を整理してみよう。
まず通説は「フェイムではデュアン・オールマンやダン・ペンの白人が黒人と力を併せ、一時代を築いた」。
ここで著者は二つの認識不足を指摘する。
その1が「黒人は音楽を作り、売るのは俺たち白人に任せとけ」が、無意識の人種差別だ、と。
その2がボビー・ウォマックら黒人の演奏を、まったく無視がその象徴、と。
したがって本書のタイトルが「ゴースト・ミュージシャン」。ボビーらがゴーストライターの音楽版、ってこと。

斬新な切り口の一方で、追認するすべの説明に欠けてるのが残念。
フェイムのスタジオ・ミュージシャンで、ロジャー・ホーキンズ(白人;ds)のクレジットでも、フリーマン・ブラウン(黒人:ds)が演奏してる場合もあるという。著者は二人の演奏を「95%の確率で聴き分けられる」と述べる。
あきらかにフリーマンが上手い、と言うが、どう上手いか記述が曖昧なだけに、それの正しさを自分が、理解できてるかどうか。

誰が演奏しててもいいじゃん、と身もふたもない視点もあるだろう。でもそれだけじゃ、つまらない。
クレジットを盲信せず聴きこむことで面白い聴き方ができる。そんな刺激を与える本。
2013年11月04日 07時35分21秒
ファミソン8BIT USA
10代の頃は「懐メロ?けっ。オッサンが」とバカにしていた。だが不惑を軽く超えた今、懐メロの良さが分かるのよ。歳は取りたくない。
こないだ出た"ファミソン8BIT USA~洋楽編
"ってのが、ピコピコ8bit音源と、ベストヒットUSAをダブルで懐メロできる手っ取り早い盤だ。まあ、まだこれをガツガツ買うほどは枯れてない。新しいので聴きたいのがまだまだある。こういうのは、あと10年後に買うの取っておこう。
2013年11月03日 10時41分51秒
JB論
『JB論〜ジェイムズ・ブラウン闘論集1959-2007』編 著:ネルソン・ジョージ、アラン・リーズ(2013:スペースシャワーブックス) を読む。Amazonの頁はこちら。http://alturl.com/i9b2w

"ベスト・レビュー&インタビュー集"のあおり文句と少々異なり、いわゆる音楽雑誌に載るようなコラムを暦年順にまとめた。インタビューと言っても対話形式でなく、それを素材にライターが熱っぽく自分の意見を語る記事のタイプだ。

JBの音楽入門には向かず、むしろファンか「JBの生きざま」を同時代的に知りたい人向け。
内容は非常に興味深い。
猛烈なツアーを繰り返し、独自の世界を切り開いた初期のレビューで当時の熱さが伺え、強靭な自信と成功をつかんだJBの華々しさが堪能できるのが、前半部分。黒人のオピニオン・リーダー的な役割を強調するなど、同じ自慢話が連発するあたりに閉口しかけたところで、本書の読みどころ。

中盤、ディスコ時代。JBは凋落する。恐ろしく叩いた記事も平然と編纂する内容は、あっけにとられた。この手の本って、たいがいは礼賛か批判一辺倒だから。
JBはまだ、金がある。動員数は落ちても名声もあるし、音楽的な自身もあり。

さらに3人目の妻エイドリアンと結婚した辺りで、JBはものの見事におちぶれる。薬中で逮捕/収監されてたあたり。このころの記事は、とても辛い。JBは底辺をはいずり、無様なさまをぶちまける。強烈なプライドが空回り。

そしてJBは"Living in America"で復活。4人目の妻トミーとの裕福な暮らしが戻る。ここが終盤。記事は褒めつつも、皮肉さが滲む。そう、JBの偉大さは間違いないが、70歳を過ぎて、頑なさと傲慢が滲む。冷静に考えたら、そんなもんだろ。独裁で依怙地なJBの姿は、なまじ周辺をコントロールするパワーが残ってるだけに、苦い。

JBは最後まで枯れず、熱く疾走した。そして、葬儀へ。
一気に読んでもいいけど、ちびちびと楽しむのもいい。JBという、素晴らしく才能があって、ムチャクチャに我儘な男の生きざまを傍観的視点で堪能できる本だ。

最後のディスコグラフィーも圧巻。シングルでも知らない曲が多い。アルバムはほとんどが叩きつつ、超抜粋。CDリストに興味あったが、さすがに比較的最近のコンピを上げている。キャリア外観は4枚組"Star Time"(1991)だし。

僕の世代だと、JBは異端だった。80年代は山下達郎しかJBを語る人がいなかった。当然、ほとんどのアルバムも廃盤。バンバータとの"Unity"(1984)のPVを見て「何だこの濃いオッサンは」と思ったな。"パパのニューバッグ"をラジオで聴いて、ミニマル性を理解できず混乱してた。
山下達郎のラジオで、まとめてJBを聴いたなあ。ポップスに当時は興味あり、なんでJBがカッコいいのか、さっぱりだった。

ソウルに興味が出て、しだいにJBの良さが分かってくる。全部同じ曲に聴こえたのが、しだいに「どれも違う」ことが分かってきた。復活の"Living in America"が1986年。
カップヌードルで「ゲロッパ」が1992年。なんか納得いかなかったな。バブルだ、バブル。

そんなぼくの世代だと、JBのベスト盤はクリフ・ホワイト編集一択になる。
"CD of Jb"(1990)http://alturl.com/fd2e2 と、"Cold Sweat:CD of Jb2"(1990)http://alturl.com/p97mf 。
ショーの流れで編集した前者と、長尺タイトル曲にやられた後者。でも今だと、マスタリング・レベルも低い。確かにまとめて聴ける"Star Time"(1991) http://alturl.com/jvvy7 が入門編だなあ。これは聴いたことない。いまAmazonで見ても、その後にまとまったお薦めのBoxって見当たらない。20年以上前のベスト盤が、今でも有効ってどうよ。
どっちみち粗製濫造のアルバムを聴くより、JBはベスト盤がいい。

なお当時から一貫して、達郎はJBのベストに"I'm a gready man"(1971)を上げていた。異論はない。
比較的マイナーな曲だと、ぼくは"Get up offa that thing"(1976)も好き。"SUPER BAD"(1970)も良いよなあ。・・・あげ始めると、きりがない。
ときどきJBのダンスが見たくて、Youtubeを探す。80年代当時、JBの全盛期の映像なんて見られなかったもんなあ。
2013年11月02日 08時55分11秒
パウロとヨハネ
井沢元彦:著「逆説の日本史」が面白くて、片端から読み進めている。
福沢諭吉やマルクス史観で日本の歴史学はおかしくなった、と批判。具体的には日本独自の信仰である、「和・言霊・怨霊・穢れ」の言及が無いゆえに、学会や一般的な日本史観がおかしい、と述べた。

今のところ19冊まで刊行、幕末まで話が進んでるようだ。今、足利や織田の辺りを読んでるところ。別に一巻から順番に読んでないため、多少時代は前後してる。
Wiki見ると井沢自身も批判受けてるようだが、新説で準拠枠をひっくり返す本なため、頭空っぽで読み進められるのが良い。しかし週刊誌連載なだけに、少々センセーショナルに過ぎ、繰り返し多いのが閉口だが。

で、タイトルの話に戻る。3巻を読んでるとき、キリスト教徒なりの名前ってくだりが興味深かった。日本人は宗教オンチである、が井沢の主張であり、色々と考えさせられる。
たしかにパウロとヨハネと聖人ゲオルギオスにちなんだメンバーがいるバンドって、キリスト教圏の人には、ほんのり特別なニュアンスあるのかも。
オリジナルのままなら、ペトロ・ベストもいたのに。リンゴ、ってキリスト教と無縁な名前のドラマーにメンバーが変わったからなあ。ちょっと興ざめ・・・なわけないか。

今のBGM:Judas Priest"Freewheel Burning"(1984)
 特に日記の内容とは関係なし。何となく聞きたくて。9th『背徳の掟』(原題:Defenders of the Faith)に収録。メタルは詳しく無く、特にプリーストに思い入れも無い。
 メタルもハマったら面白いんだろうな。とりあえずスカッとするには良い。ギター・ソロがアドリブで突っ走らず、構成ばっちりのハモりあり。様式美、だ。
2013年10月29日 22時48分05秒
全ての人はノイズが好きである。
"INDUSTRIAL MUSIC FOR INDUSTRIAL PEOPLE!!!: 雑音だらけのディスクガイド 511選"を読む。面白い。
(持田保:著、DU BOOKS/2013) Amazonへのリンク:http://alturl.com/8qk3f

著者はDisc Unionの元店員で、ほぼすべてのレビューを一人で書いている(数項で松原祐一が寄稿)。とにかく、詳しい。知識量に圧倒された。
ノイズ、特にインダストリアル系が好きな人は一読の価値あり。

Disc Union吉祥寺店で、いきなりノイズ押しされたのは5〜6年前だろうか。いきなりコアでディープな販売棚ができたときは仰天した。ユニオンのあちこちを巡ってるわけじゃないが、渋谷店より新宿の一連店舗よりは、当時の吉祥寺店は濃かったと思う。
たしか当時のメルマガで「ノイズ売りたい人は事前に連絡を。詳しい店員がいますので」と、書かれてた気もする。

ノイズと一口に言っても、奥は広い。ただし間口はめちゃくちゃ狭い。
限定盤が多く(マーケットが狭く)、コレクター的なわりに試聴音源で十分(10秒も聴けばわかるし、興味無ければそれ以上聴きたく無い)な世界なため、ディスクレビューは意外に需要が無い。だが、マニアな世界なだけに全貌をつかみづらく、その点でディスクレビューは有難い。

とはいえマニアでも全貌掴むのは、意外に難しい。ノイズこそ「聴かなきゃわからない」ジャンルと思う。10秒聴いて印象掴み、1枚聴いて世界に浸り、10回聴いて惚れ込む。そんなジャンルだ。つまり聴きこまなければ良さは分からないし、聴きこむほどに聴ける枚数は減っていく。
快感原則と直結した音楽だけに、興味と異なる盤を繰り返し聞くことは苦痛以外の何物でもない。そもそも「聴きこんで好きになるぞ」って音楽でもない。
そもそも長時間聴ける音楽とも言い難い。ノイズばっかり数時間聴き続けたら、ちょっとは休みたくなる。
聴いて楽しめればいい、のジャンルだけに、興味外の盤を聴きこむマゾヒスティックな人は少ないだろう。ショップの店員でもなければ。

そう、この点で本著者の視点はベストだった。本盤のタイトル通り、趣味的にはたぶんインダストリアル、特にロック的なダイナミズムが好きな人じゃなかろうか。その一方で、本盤の幅広い視点と量は驚異的だ。なまじ僕と趣味が全くかぶらないだけに、良くわかる。

で、冒頭に戻る。ノイズは喧しいだけじゃない。日本の詫び寂びが好き、と言う人は「フィールド・レコーディングや小音ノイズが好きだ」と言ってるに他ならない、と考える。
ノイズはハーシュやビート系だけじゃない。もっと豊潤だが狭くて、似通った色合いでもどっぷり深く枝分かれする。とにかく聴き手を選ぶ世界だ。本書を手がかりに、色々と好奇心を膨らませて聴いていきたくなる。
だが本当は、できれば「ジャケ買い」で奥を探りたい。100枚中99枚が外れでも、1枚の大当たりがある世界だから。
2013年10月28日 21時40分58秒
Noda Map "Miwa"
野田秀樹の新作を見てきた。美輪明宏の半生を虚実ないまぜに戯曲化した。宮沢りえと古田新太が美輪役、野田は三島由紀夫役。

脚本よりさらに、演技よりさらに、装置と演出が素晴らしかった。大きな装置を巧みに使い、華やかでスピーディな場面転換が凄い。照明もきれいだ。比較的後ろの方の席だったせいか、舞台というより奥行ある映像を見てるかのようだった。・・・変な比喩だが、褒めてます。生々しい舞台の勢いを超えて、別世界が広がっていた、と言いたいのです。

脚本も野田節の言葉遊びから、美輪の歌を巧みに使った場面まで幅広い。Wikiで美輪の経歴を簡単に読んでいった方が、より楽しめると思います。どの辺がパロディでどのあたりの実体験を踏まえて物語化してるか、ピンとくるのでは。めけめけ。

野田秀樹の舞台は"Bee"に続き、二回目。遊眠社も見てこなかった。なんてこったい。勿体ない事をしたな。
あの発声で、よく彼は声が枯れないなあ。

NODA・MAP「MIWA」@東京:東京芸術劇場 プレイハウス
【作・演出】野田秀樹
【出演】宮沢りえ 瑛太 井上真央 小出恵介 浦井健治 青木さやか 池田成志 野田秀樹 古田新太 他
2013年10月19日 23時17分51秒
台風とマンドリル
台風、近づいてきた。雨が激しいが、明日の朝はどうなってることやら。

帰りのBGMはソウル。雨吹きすさぶ中を傘さして歩いてたら、部屋でぬくぬく聴いてた時はピンとこなかった曲が、妙にワイルドに感じて意外だった。場所と環境で、印象って変わるもんだな。

それが、マンドリル。1968年にNYで結成のファンク・バンドで、ベスト盤でしか聴いたことない。サルサの要素を混ぜたブラス入り生演奏だが、今までは妙にタルく感じてた。
だけど、改めてかっこいいな、と思った。

今のBGM:MANDRILL"MANDRILL"(1971)
ちょうど聴いてたのが、これ。同名の1stアルバムにも収録され、この曲はシングル・カットもされた。アルバムがR&Bで27位、POPで48位。シングルはPOPで94位とある。

ちゃきっと鳴るビートはドラムにラテン・パーカッションが加わり、サクサク次々と展開する。オルガンやホーンのソロ回しもジャズと違い、歯切れ良く短くつながる。
前に聴いたときはラテン風味のノリが古めかしく、馴染めなかった。当時は先鋭かもしれないが。
1stアルバムの曲目をwikiで見たら、B面は組曲みたい。プログレっぽい構築だ。音はラテン・ソウルだけど。シカゴやBS&Tあたりのブラス・ロックも同世代。いずれにせよ、時代だな。
2013年10月15日 21時23分35秒
Robert Pollard Releases His Last Record?
風邪ひいて休暇。一眠りして、熱が下がったようだ。もぞもぞ起きてネット見たら、ショックなニュースが。
年末に出すロバート・ポラード(GbV)のソロ"Blazing Gentlemen"が、彼のラスト・アルバムになるという。ソースはボブのプレス・リリースらしい。次のが最良なため、最後のアルバムにするという。
ソースはここ

GbVのライブ音源出してたデジタルサイトも閉鎖だし(運営会社のLivewireが買収で)、踏んだり蹴ったりだな。


ロバートは今年、ソロの"Honey Locust Honky Tonk"とTeenage Guitar名義で"Force Fields At Home"のアルバムしか、発表してない。
あと、GbVで"Down by the Racetrack"を今年リリース。The Sunflower Logic名義でEP"Clouds on the Polar Landscape"があるけれど。

ほかに(シングルは除いて)Circus Devils名義で"When Machines Attack"と"My Mind Has Seen The White Trick"のアルバム2枚同時発売予定あり。
"Blazing Gentlemen"はこれらに続く、今年度リリースの予定盤だった。
ソースはここ
さらに来年2月、GBVで"Motivational Jumpsuit"も予定あり。
だからいまいち、今回の"最終アルバム"の発表真意がわからない。嘘だといいな。

ボブ自身は活動控えても、音源のリリースは続けて欲しい。スーツケースもまだあると期待したい。はっきり言ってぼくはロバートの音源を聴ききれてない。だがそれでも、活動停止はさみしい。

他のファンの反応も、ぼくと似たり寄ったり。
「"今年"最後"、だろ。信じないぞ」
「明日ボブが死んでも、向こう十年は毎年、ソロかGbVが出るよな」
「もっとだ。ボブのベストは、いつだって次のアルバムだ」
「"最新(Latest)"な!誤記だよ」
「信じないぞ。来年2月にGbV出るって噂だし」
2013年09月30日 15時19分38秒
手塚と図書館
数日前の日経新聞コラムで「手塚漫画、飲食店など500ヵ所で無料読み放題」を読み、さっそく今日、近場の大きめな図書館へ行ってきた。
そもそもこのサービス、手塚プロが"TEZUKA SPOT"と名付け、まずくら寿司とコラボ。アプリDL不要で約400巻分の手塚漫画を読み放題、のビジネス・モデルという。
要するに施設側へ定期的な使用料でサービスを開放し、ユーザーは無料で読み放題のシステム。手塚プロ側も固定収入が見込める、包括販売を狙ったかたち。

ユーザーは一回で読み通せるわけもなく、施設側も繰り返し利用を見込めれば、大きな意味でマンガ喫茶的な位置づけができる。在庫保管の手間が無い分、マンガ喫茶より楽だろう。スマホをユーザーが持ち込むし。
400巻分となれば、けっこうマイナーな手塚作品も期待できる。七色いんこを久しぶりに読みたい。かといって、くら寿司行く気もしない。

だがコラムには「公共図書館など全国約500ヵ所」にサービスあり。さらに「駅や病院、長距離バスなどの利用も想定」とある。
近くに比較的大きな図書館あるから、これだ!と行ってみた。
そもそもこの"TEZUKA SPOT"、サービス実施個所が良くわからない。検索しても、くら寿司が真っ先にでてくる。どこの図書館でサービス導入やら。

で、図書館。ひさしぶりに行ったら機械化が進んでてびっくり。無人貸出機はもちろん、返却も無人。コンベアついた長い窯風の機械に突っ込んで、バーコード読み取るようだ。差し渡し1m位の先には職員がおり、ぱらぱらめくって損傷などを調べる。
なら、機械化の意味があまり無い気もしたが・・・そんなもんか。

驚いたのは「予約本受け取り場所」。フロア中央に6畳くらいの部屋があって、個人の図書館カードかざし、中へ入るシステムだった。人減らしが目的と思ったら、職員はそれなりにいる。めんどくさい業務を機械化して、楽しようってコンセプトかな。

最近は図書館へ本を返しに行くのが面倒で、すっかり図書館ご無沙汰だった。だが開架図書棚を見てると、面白そうな本が色々。借りなくても、その場で読めばいいんだよな。
だが、この点は敢えてサービス悪くしたまま。座りづらい椅子がちょろっとあるだけ。入りびたりを避けるためか。

適当に一冊、2時間くらい読んでいた。驚いたことがもう一つ。あんがいみんな、居座ってるんだね。ラノベ読んでた学生風も、勉強してる学生も、なにやら調べものっぽい中年も、ぼおっと雑誌眺めてる老年も、誰一人2時間で席が入れ代わらない。こりゃ、楽に読めたら誰も出て行かないな。図書館24時間化も夢だが、来館者居座り考えたら現実化はありえない。俺だって、食事と風呂以外はずっと図書館で暮らしてもいいもん。本もCDもビデオも雑誌も、読み切れないほどある。

さて、冒頭に戻って"TEZUKA SPOT"。スマホ弄ったが、それらしきサービスに入る方法が分からない。あきらめてバス停に向かう。途中にくら寿司あり。
「入るのは何だから、外からアクセスできるか試そうか」と頭に浮かんで、はたと気が付いた。まずは専用スポットに接続が必要なのか、と。

図書館へ戻る気も、くら寿司へ入る気も無く、とぼとぼと家路へ。したがって、近くの図書館で手塚読み放題かは、いまだに謎のまま。
2013年09月28日 15時22分10秒
アイドル投資:O$HIMA \UKO
AKB48タイアップもここまで来たか。外為オンラインが、大島優子の声をアナウンスに使ったシステムをリリースした。
http://www.gaitameonline.com/rpage4/accountElist.html?gclid=CNzTpYei4bkCFWxIpgodMiAA4g

投資アドバイス、みたいな胡散臭い売りじゃなく、あくまで声だけなのがポイント。このビジネスモデル、他にも拡大できるよな。声だけでいいんだから。そのうちAKB炊飯器とかAKBチャイムとか出るんだろか。「ご飯炊けたよ〜」とか「お客さんが来たよ〜」とか。音声データをカード形式かDL更新可能にすれば、システムそのままバリエーションいっぱい、もできるなあ。

今のBGM:SoulNRnB's Street Sounds Sessions 114(from mixcloud)
ソウル系のDJミックス・ブログ、SoulnR&Bが音源データ提供をMixcloudにシフトのようだ。最近、HDD圧迫が嫌で、フリー音源DLもめんどくさくなっている。部屋で聴く分にはストリーミングのほうがありがたい。しかし著作権的に、こういうのはどうなってるんだろう。

ブログ:http://soulnrnb.blogspot.jp/
Mixcloud:
http://www.mixcloud.com/soulnrnbgrizz/soulnrnbs-street-sounds-sessions-114/
2013年09月23日 19時13分40秒
無料とは雑。
台風、強くなってきましたね・・・。ROVO"RAVO"を聴きつつネット渉猟。PCオーディオ移行の今、寝転がってるかネット・サーフィンのどちらかが聴くスタイルとなる。
"RAVO"をZAO"Kawana"(1976)を類似例に挙げてるレビューがあった。

プログレは詳しく無く、ZAOも聴いたことない。ネット検索すると、Youtubeに全曲音源があったりするんだよな・・・。

Youtubeで聴くのは試聴か否か。ビジネスとかミュージシャンへの思いはさておいて、結局のとこ無料で聴くのは以下に集中力を保てるか、だろう。たとえ100円の中古CDでも金出したら何となく元を取ろうとするのが人情。まして定価で買ったらなおさら。
無料だと、ちょっと飽きたらスイッチ消しちゃってそのままだ。

ネットで無料や配信音楽が溢れたら、いったん破綻して突き抜けた音楽シーンが産まれるだろ、と思う今日この頃。音楽は無料の焼野原で潰れるようなもんじゃない、と信じる。
で、Zao"Kawana"とROVO"RAVO"の類似性だが。何となく評した人の印象が分かる。タイトにフレーズを重ね、弦も入ったZAOの編成を"RAVO"に見立てたか。
"Kawana"はずっとジャズ・ロックより。ミニマル要素は薄い。しかしアップテンポでも、妙に地に足のつかぬリズム隊だな。連打するビートも、上物と重なりそうで絡まない。
アルバム全体ではテンション一辺倒でなく、クラシカルな場面も入れトータル性を意識していそう。

全部は聴いてないが、ちょっと摘み聴き中。Youtubeはニコニコ(無料版)と違い、シークバーをすいすい動かし聴けるのがありがたい。
この手の操作感、アナログでもなかった。アナログだと狙い澄まして針落し。間違えたら、やり直すが勘まかせ。正確なタイムが分からないから。
CDデッキだと早送りボタン押すだけ。意外とこれが、もどかしい。さくっと飛ばせねえかなあ、と思ってた。i-tuneやfoober2000、Youtubeなどのデジタル環境で、操作感は簡便が進むという。皮肉なものだ。
2013年09月16日 11時02分58秒
音楽配信は思考実験の宝庫
小野島大「音楽配信はどこへ向かう?」が面白かった。

電子書籍専門の発売で、ミュージック・マガジン誌のコラム「配信おじさん」をまとめた。

副題が"アップル、ソニー、グーグルの先へ…ユーザーオリエンテッドな音楽配信ビジネスとは?"で、08年から13年4月までの電子書籍にまつわる話題が語られる。
興味深い点は時代と視点の違いを、いろいろ考えさせられること。ここ数か月、もやもや考えてたことが頭の中で整理できた。

日々変動する音楽配信ビジネスを熱っぽく語る筆者のコラムをまとめて読んでたら、
本書の内容とは別次元で、いろいろ考えさせられる。

具体的には、こんなことがぱっと頭に浮かんだ。それぞれまとまった論考ができる。
・所有とメディアの関係
   〜メディア追求の究極は所有欲で、音楽じゃない〜
・量と質の反比例
   〜玉石混交か最短距離か。誰が選ぶ、聴くべき曲〜
・二次元評価から多次元評価へ
   〜音楽好きの複合位置。チェックは本当に必要か?〜
・音質追求と簡便性と
   〜AMラジオとハイエンドコンポ。でも、あなたは外で聴く?〜
・所有か、アクセスか
   〜現場志向とライブラリ志向〜
・メジャーの価値とインディの混迷
   〜歴史を誰が残すか。フィルターの価値〜
・音楽配信と中古盤
   〜利益モデルとユーザーの価値観を巡って〜
・情報収集の必要性
   〜コミュニティでの情報収集、価値観は誰が決める?〜
・音楽評論の配信と評論の評論
   〜論考か情報か。雑誌からWebで記録と不安定、どちらを選ぶ?〜
・ミュージシャン側からの個性的な発表スタンス
   〜電子化の本質と継続性。明田川、灰野、メルツバウ、大友、吉田〜
・日本と海外、なぜ違う?
   〜ジョン・ゾーンの囲い込み。各種サイトと日本の未来〜
2013年09月07日 11時18分24秒
秋の夜長を目指して
暑いけど、涼しくなってきた予感。このまま過ごしやすい秋になって欲しい。
しみじみソウルを聴きたくて手持ちの盤から引っ張り出してきたのが、これ。

Anthony Hamilton"Change Your World"(2005)

3rdアルバム"Ain't Nobody Worryin'"収録のバラード。作曲クレジットにQuestloveの名があり。フィラデルフィア出身のトラックメイカーだが、フィリーな雰囲気とリズムの軽やかさのどっちへ貢献だろう。
この盤そのものは中途半端な70年代郷愁がぴんと来なかった。でも後半のバラード群は良いなあ。アメリカ・ソウルの伝統なのか、歌モノはたいがい後半にしっとりメロディをぶつけてくる。

この曲は70年代フィリーのストリングスをアレンジの中央に置き、シカゴの乾いたリズムを載せたかたちか。NY風のスマートなトランペットのソロも心地よい。後半で華やかに舞いあがるのは西海岸っぽい。
歌い上げはしない。呟く歌声は芯をしっかり持ち、メロディをじわじわっと操っていく。サビでの歯切れよく、メロディとユニゾンで切れる伴奏が小粋だ。

しかしシングルカットもされてないのに。よくYoutubeに上がってるな。
2013年08月26日 21時45分11秒
PCへLPを。
アナログ盤をMP3化する機器のニュースをネットで見かけた。
ノバック製:http://amass.jp/27061  
GEANEE製:http://news.mynavi.jp/news/2013/04/23/190/index.html

1万円以下と思ったより安価になっている。特にノバック製はそんなにスペース取らなそう。中古屋でLP投げ売りの一方で、こういう商品っていまだに出るんだ。あくまでデジタル化が主眼。DJユースより団塊世代のLP資産がターゲットっぽい。

以前の日記でも書いたが、真のディギングはCDリイシューでなくLP堀り。デジタル化が手間でLPの棚は中古屋で一切見てこなかったが、この値段なら買おうかなって気にもなってくる。ふむ。そう考えるといい値段設定だ。問題は耐久性だな。

とはいえLPのMP3化はタグ付けとかめんどくさそう。片面1ファイルなら、ポピュラー系はファイル切り分ける手間もありそうだし・・・。
マンガ喫茶みたいなとこでLPデジタル化の設備利用できる店舗って、誰かオープンしてくれないか。複製権とか著作権の問題あるが、自炊の店あるなら「機器レンタル」のグレー・ゾーンでギリギリ成立できると思う。

しかしLPのデジタル化で最も問題なのは「片面再生時間=デジタル化必要時間」だなあ。数十枚持ち込んで、片端からデジタル化ってのが容易に出来ない。するってえとやはり、デジタル配信の活発化を待つしかないのかのう。
2013年08月24日 16時05分58秒
未読の音楽本4冊を紹介。
面白そうな音楽本が出てるので、まとめて紹介。まだどれも読んでいないが。URLの先はAmazonです。

1「日本の電子音楽 続 インタビュー編」http://alturl.com/2y7i7
2「黛敏郎の電子音楽」http://alturl.com/vurgv
3「篠原眞の電子音楽」http://alturl.com/t6f4g
4「Japanoise: Music at the Edge of Circulation 」http://alturl.com/c4uih

1〜3は川崎弘二の編著。大部「日本の電子音楽」を発表した著者だ。

「日本の電子音楽」は分厚く寝転がって読むには不向きだが、内容は素晴らしく面白い。何年前だかにファミレスに持ち込んで、涼みながら読み進めた記憶がある。
日本の電子音楽を作った各氏へのインタビューをもっと読みたいな、と思ってた。
その期待が叶った、インタビュー集の続編が(1)。今年6月出版の奥付で、谷川俊太郎ほかへのインタビューを収めた。
 この著者の質問は、切っ掛けのみ。あまり個性を出さず聴き手に努める。だが、膨大な知識に裏付けされており、弾きだす話がとても興味深い。

(2)は11年8月、(3)は12年5月のコンサート用に準備された冊子。だが内容は濃い。特に(2)はほぼ二段組。各氏のインタビューや著作をまとめた第一部と、各氏を分析した第二部に分かれている。読むのが楽しみ。

現場は立ち会うことが前提だ。しかし後追いや後進に向けまとめた本は、とてもありがたい。日本のノイズシーンをアメリカ人がまとめたのが(4)。
日本のフィールドワークも行い、ごく一部は日本語の著作も参照のようだが、基本は英文文献や記事を元にまとめたノンフィクションのようだ。
もちろん内容は読んでいないのだが、各ノイジシャンへのインタビューは無さそう。

日本のノイズシーンは、断片的に情報がネットに上がっている。だがまとめた本は、ぱっと思いつかない。特にインタビュー集みたいなものは。クイック・ジャパンの8号やイーターの6号くらいが、ぱっと思いつくところ。
いわゆるジャパノイズの超大著のインタビュー集、とか誰か出してほしい。まだ関係者が生きている今のうちに。

ただし大著は寝ころんで読めないから、分冊か電子書籍がありがたい。
2013年08月22日 20時37分20秒
ミュージシャン用ツアー・ガイドブック
日本でも興味深い本が日々出版されてるように、海外でも面白そうな本は次々出ている。読むあても(読めるあても)ないのに、Amazonのウィッシュ・リストに何冊か洋書を放り込んだままにしてる。今日紹介するのも、そんな一冊。

"The Musician's Guide to the Road: A Survival Handbook & All-Access Backstage Pass to Touring"Susan Voelz:著(2007,Billboard Books)

音楽ビジネスをミュージシャンの視点で書いた本は、今まで何冊か出ている。ぼくはミュージシャンになる予定も、ツアーへ出る予定もない。だが裏話として、普段知りえない話として興味を引かれる。
ぱっと思いつくのだと、メガデスのベーシストの著作は、以前に面白く読んだ。
音(ロック)に潜む金(ビッグ・マネー)―ミュージシャンによる、ミュージシャンのためのロック・ビジネス経済学」デイヴ・エレフソン:著(リットーミュージック:1999)

著者のSusan Voelzはポイ・ドッグ・ポンダリングのメンバー。ぱらぱら内容を見たが、実に興味深い。数週間の北米ツアーを小さなバンかツアー・バス程度で回ることを想定した、旅行ガイド本に仕立てた。マニュアル的な書き方をしており、冗長さはなさそうだ。
問題は、英語だってこと。ニーズは超ニッチだし、まず邦訳はあるまい。だが、日本語で快適に読みたい・・・電子書籍で翻訳本を手軽に出すビジネス・モデルって、成立しないものか。
読む側の問題は、低予算で翻訳化は訳者のレベルが不安なこと。
下訳はバイト感覚で安く、編集か監修に金をかける構図になると思う。出版そのものは電子書籍で経費を抑える方向で、だれかビジネスはじめてください。面白そうな本なら、買います。

ちなみに音楽ツアー準備のノウハウで検索したら、CD BABYの関連サイトでこんなのもあった。ネットだと、ニッチなのが色々あるなあ。
The DIY Musician’s Complete Guide to Touring
2013年08月19日 20時17分13秒
25万枚のレコードを保有
2011年に68歳で亡くなったコレクター宅のLPをカナダのレコード屋Apollo Musicが、一括購入した。半年くらい前の話という。(http://amass.jp/26487)
やはり「どんなレコードがあるか」が、最も興味あるところ。

25万枚をすべて聴きこむことは、物理的に不可能。このコレクター氏は目的をもって集めていたのか、商売みたいに同一タイトル複数を所有してたのか。少なくとも写真見る限り、あんまりレコードを大切にしてたとは思えない。

Apollo Musicはいずれ「コレクター宅盤、放出!」とセールやるだろう。だがすべて1点ものってのも、なんだかなあと。貴重盤なら売れてしまえば、また世に出てこない。CD再発で聴く機会もあるまい。とはいえそこまでレア音源が残っているものか。

どんなセールだったら、熱く記事を読むかなあ。やっぱりドゥワップのシングル集とか、かな。英国のシングル集ってのも良いかも。当時のローカル・バンドの盤とかでも、面白いなあ。結局、ミントのレア盤!だと、あんまり惹かれない。アナログ買わないから、完全に他人事で終わってしまう。どうせなら歴史に埋もれた盤が出てきた方が、掘り出し物って気分で熱く読めそう。

・Apollo Musicは本件に関し、2件のエントリあり。レコードの中身に触れた部分のみ、簡単に抜粋する。当時のアメリカのヒット曲を適当に買いあさってたみたい。
 まだ1/4くらいしかチェックできてない。なにせバンクーバーのCBCラジオ局から6万枚の買い取りも同時期にあったから。

・さまざまなロックやロカビリー(プレスリーが彼のお気に入り)。シングルが約2万枚。ほとんどがオリジナル盤で、プレスリーやリッキー・ネルソン、カントリーなど。コロンビア時代カール・パーキンスのレアなEP盤もあり。

・状態は玉石混交。ほとんどは1ドル叩き売りコーナー行き。
・ジム・リーヴァースに挟まって、エクセロ時代スリム・ハーポの良盤あり。
http://www.audiophilerecords.ca/hoarder-house-full-of-records/
http://www.audiophilerecords.ca/hoarder-house-additional-photos/

写真見ても、他にどんな盤があるかよくわからない。持ち主は何考えて買ってたんだろう。自分が何を持ってるか、把握できてたんだろか。

このレコード屋は昨年末に"50セント・セール"を繰り広げた。SPからシングル、ジャズからポップまでずらりと数万枚を放出した。ジャケや盤質はボロボロだろうけど、どうせならこういう安物放出のほうが燃える。
http://www.audiophilerecords.ca/huge-pre-christmas-50-cent-sale/
2013年08月16日 16時38分47秒
初あまちゃん
今日は早めの夏休み開始。人生初、あまちゃんを見た。へえ、テーマ曲ってこういう曲なんだ。

ストーリー知らないので流れはさっぱりだが。小泉京子や薬師丸ひろこの姿に、歳の流れをしみじみ。薬師丸は演技が自然で、うまいなあ。
毎回見たくなるかは別として、へええと感じた朝でした。

さ、寝なおそ。昨夜は寝苦しく3時に目が覚めて、まだまだ眠い。
2013年08月09日 08時50分07秒
免許更新とト調
5年ぶりの免許更新で府中へ。毎回の手続きハイテク向上も楽しみだが、今回は特に感じられず。4ケタ数字二つを準備して、免許受け取り後に番号登録で更新完了って前回もやったかな?覚えてない。
免許もさほど変わり映え無し。裏面に臓器移植の意志宣言を書き記すのが、前と変わったところ。

三鷹行きのバスを待ってる間、スマホをちこちこ弄ってたら「ト調」ってサイトを知った。これ、便利で面白い。東京圏のライブ情報がてんこ盛り。いわゆるホール公演でなくライブハウスも網羅がありがたい。重宝するかも。スマホ向けサイトだが、PCからでも見られる。
http://www.tochoh.com/
2013年08月04日 20時52分13秒