今お気に入りのCD

最近買い込んで、気に入ったCDを中心に感想を書いてます。
したがって、特に新譜だけってわけじゃないですが、お許しを。

アイ・ディデュント・ノウ・アバウト・ユー/アケタ・ミーツ・タケダ(1997:アケタズ・ディスク/PLATZ)

 最近ジャズが気持ちいい。特に明田川荘之(p、オカリナ)に凝ってしまい、しょっちゅう聞いている。メロディアスでいながら、フリージャズまで聞かせる振り幅の広い演奏がわくわくする。
 
 このCDのテーマは武田和命(ts)の追悼アルバム。武田は1989年にこの世を食道癌で去っている。
 収録されている曲は、明田川のオリジナルが二曲、エリントンのタイトル曲と、モンクの「リフレクションズ」の計4曲だ。すべてアケタの店で1987〜1988年にかけて録音されたもの。どれもこれも10分を超える長尺の演奏だ。
 演奏曲の内3曲はカルテットで、ラスト一曲の「リフレクションズ」のみ明田川のピアノ演奏という構成。
 
 もともと僕は、明田川のシンセ演奏を聞いてみたくてこのCDを購入した。
 アルバムしょっぱなからシンセのぐにぐにした演奏が聞ける。あとはフリージャズの早いパッセージに流れていくのだが、武田は線の細いテナーサックスで絡んでいく。
 明田川のピアノは、どの曲も雄大に流れてかっこいい。3曲目なんか、盛り上がっていいところでフェイドアウトしていくのが残念でならない。
 明田川が演奏が興に乗るたびに始まるトレードマークの唸り声も、そこかしこで「ウィーウィー」聞こえる。この唸り声は、生で聞くとまた違った楽しさがあるのだが・・・。
 
 武田とのコラボレーションという意味でベストトラックは、2曲目のタイトル曲だ。19分近くにわたって繰り広げられる、デューク・エリントンの曲は、太い武田のサックスと、やさしく音をピアノでおいていく明田川との絡みが素晴らしい。ここでの武田のサックスは、時々ふと甲高く音を振り絞りながらも、ゆったりとつぶやくようにフレーズを積み重ねていく。
 
 ということで。フリー色の強い明田川のオリジナル2曲と、ふくよかな演奏が心地よいカバー曲2曲で構成される、すてきなCDだ。
 ちょっと録音レベルの低いのが玉にきず。

ジェントル・ノヴェンバー/武田和命(1979:オーマガトキ)
 
 上のアルバムを聞いている時にふと思い出して、しばらく前に購入した武田和命(ts)のアルバムを聞きかえしてみた。共演者は山下洋輔(p)、国仲勝男(b)、森山威男(ds)。全8曲で前半4曲がアメリカのジャズソング、後半4曲が武田のオリジナル曲という構成。
 録音は1979年で、武田は40歳。ちょうど山下洋輔のグループに参加する直前のタイミングの演奏だ。ライナーの年表によれば、1967年から1978年までの音楽的沈黙期間を過ごしていた武田が、音楽の世界に復帰した頃らしい。彼自身の音楽にとって、第二のピークといった頃だろうか。

 ここでの武田は、太くしっかりした音でソロを吹き上げる。
 ゆったりと空間を生かし、きれいなフレーズのしっとりとロマンチックな演奏が続いていく。音を埋め尽くすでもなく、切り開いていくでもなく。音空間を漂っているような感触だ。
 山下ら共演者も、武田を立てて控えめに演奏する。
 どの曲もスローな曲ばかりで、メロディは柔らかい。

 ちょっとセンチメンタルに過ぎる部分もある。
 テクニカルな面で気にかかるところもある。
 それぞれフレーズの終わりで音がきれいにデクレッシェンドせずに、ぶつ切りになってしまうところや、少しかすれるリードミスの引きずりが、ほぼ全面的に音にくっついて鳴ってしまっているところなど。
 でも、そんなところが気になるのも、このアルバムの音がとても暖かいせい。
 皮肉でもなんでもなく、このアルバムは聞いていて気持ちいい。
 だからこそ、重箱の隅をつついてしまいたくなるアルバムだ。
 何も考えないでウイスキー片手に聞いていれば、うっとりできることうけあい。 

Vamos A Darle/Huracan de Fuego(1998:NUBE NEGRA)

 輸入盤をジャケ買いしたので、情報はなんもなし。
 どっちがタイトルで、どっちがグループ名なのかすらわからない(^^;)
 (ご存知の方、ぜひご教示ください)
 いくつものパーカッションのみをバックに、ぶっとくゆれる歌声が楽しめるレコードだ。ところどころ入る鳥のさえずりなんかのSEは、ジャングルの中を味あわせたいかの演出かな。ただ、このドライブ感に小細工はいらない。
 
 太鼓は打ち込みかと思うほどタイト。コーラスも一糸乱れずにリードヴォーカルと掛けあう。基本はリードヴォーカルを一人立て、コール&レスポンスが中心だ。
 荒っぽい方がリアリティがある、って考え方もある。整然とした音楽は作為的なものであり、魂がこもってないって固定観念が、正直僕にもある。

 この紹介文を書きながらバックに流しているのだけども。いまだにクリックを聞きながら多重録音したんじゃないか、って疑いが抜けない。
 だからこのCDを手放しで誉めていいのかちょっと考えてしまった。
 本当にこのアルバムは、「無菌室の中の自然」てな感じがする。
 泥臭い肉体的な音楽をしているのに、恐ろしいほどほころびがない。
 けれど、僕はこのアルバムを「緊張感があふれてる」と好意的に評価したい。
 こんなにテンションの高い音楽は、あんまりない。太鼓と肉声だけの、およそ飾り気のないアレンジなのに、聞いていてちっとも退屈しやしない。

Go ahead.Ignore me/Todd Rundgren(1999:Bearsville/castle)

 去年にレコード屋に並んでいたトッドのベスト盤。前もこの欄で書いたが、一人で何もかにも作ってしまうミュージシャンが大好きな僕にとって、トッドの作る音楽はとても親しみやすいものだった。
 僕がトッドを知ったのは高校3年の時くらい。80年代後半の頃。「アカペラ」はリリースされていたが、ベアズヴィル時代のトッドは当時聞けず、1987年にこのキャッスルからCD化された「魔法使いは真実のスター」を何度も何度も聞き返し、「ジャスト・ワン・ビクトリー」が大好きだった。

 その後ライノが片っ端から再発(90年位かな?)を始め、今ではトッドやユートピアの音源の全貌が容易に聞けるのは何より。僕も当時は再発LPをあれこれ買ったもの。
 とはいえ、トッドのアルバムをすべて聞いたわけじゃなく、ユートピアに至っては「ウープス!ロング・プラネット」と「TRKW」しか聞いたことがない。
 後者にいたっては、つまらなくて売ってしまったほどだから、僕はトッドのファンを名乗るのは失格だろう。
 なにせ、こうしてインターネットで遊んでいながら最近のトッドをまったく追いかけていないんだから。

 だけど、僕はトッドは好きなミュージシャンだ。
 トッドのアルバムを聞いてみて、ソフトな曲と派手な曲を交互に繰り返す、2面性が印象に残ってる。うっとりするようなメロディのあとに、雰囲気をぶち壊すアップテンポの曲やひねくれたアレンジの曲を聞かせるアルバムの構成に最初はとまどったものだった。
 僕はトッドの浮き上がるようなやさしいメロディと、どっかリズムが狂った演奏。
 ピッタリあってもおかしくないのに、ほわわんと震える自分自身の多重コーラスにかこまれて、ふっと不安になるほどふらふら不安定に歌うトッドが好きだから。当時LPを頭から聞きながら、メロディアスな曲ばかり続けて聞きたいな、と思ってた。

 で、このアルバムの紹介に移ろう。
 この編集盤はまさに、10年前の僕なら狂喜したような選曲だ。
 トッドのメロディアスな側面に着目して編集している。
 ベアズヴィル音源から、ソロは「ラント」から「トッドのモダンポップ黄金狂時代」まで。ユートピアもデビュー盤と「ウープス!〜」からそれぞれ一曲づつ選ばれている。
 僕的には、「サムシング/エニシング」の「ユー・レフト・ミー・ソア」が外れてるのが悔しいけども。あとは文句なしであれもこれも入ってる。
 数曲アップテンポの曲はあるが、基本的にはバラードかミドルテンポの聞きやすいメロディがならんでいる。トッドの入門盤には最適かも。

 このアルバムは、クレジットを見る限りトッドがからんでいない。
 リマスターが売りのようだけども、それほど驚くほどの音質向上はない感じ。
 でも、もしトッド・ラングレンを聞いたことがないのなら。
 ちょっと病んでいるけども、脳天気にうかれるアメリカン・ポップスを聞いてみたいと思うなら。
 ぜひ手にとっていただきたいアルバムだ。

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